台湾パイナップル頒布会(2)しごと
20210531
台湾パイナップル。肝心のお味は、どうだったかな。
今回はすぐ食べられる完熟のものを仕入れたのですが、当日入荷したものが予想以上に熟していて、実は傷んでいたものもいくつもあったのです。急遽すべての箱を開封して全部を検品し、駄目なものは撤去し大丈夫なものだけを販売しました。
傷みかけていたものをカットして味をみてみました。
これはまさに、素晴らしい天然の甘さと香り!溢れ出る果汁、前評判通り芯まで違和感なく食べられて、繊維が気になることもないほど柔らかい。酸味やえぐみなぞ全然ありません。缶詰のパイナップルに引けを取らない甘さで、まさに南国の味、「トロピカルフルーツ」の楽しさを存分に味わえるおいしさです。
掛け値なしに、私が人生で食べたパイナップルの中で一番おいしかった!(まだフィリピンやハワイの現地で食べたことはありませんけど)台湾産パイナップルの独特の風味ももちろん、こういっちゃあ何ですが、果物も腐る寸前が一番うまいってことですか?1月14日の本欄で、メロンを頂いたまま放っておいて、ぐにゃぐにゃ柔らかくなってから食べたおいしさを書きました。あれほどイッちゃってはさすがに売り物になりませんが、やっぱり完熟のフルーツは最高です。
販売するとき、お一人お一人に「完熟してますから、できるだけ早くお召し上がりください!」と声をかけさせていただきました。皆さんに一番おいしい食べごろを提供できたと思います。(日持ちはしませんが)
次回6月2日に第2回の頒布会を行いますが、TV効果もあって今日現在ほとんどは予約で売れてしまったようです。こんど入荷するのは前回ほどの完熟ではないと聞いていますので、食べごろを見極めながら楽しむこともできるかと思います。
この頒布会で駒ヶ根周辺に3000個のパイナップルがあふれ、皆さんにその美味しさを実感していただければ、今後は地域内のお店で購入されるきっかけ作りにもなるかと思います。そんなことで、台湾との結びつきを市民の方々に感じてもらえるかな…と期待しているのです。
台湾パイナップル頒布会(1)しごと
20210529
3月7日の記事で台湾産パイナップルが厳しい状況に置かれている話を書きました。あれから話が進み、消費拡大とPR支援のため駒ヶ根商工会議所では頒布会を行うことになりました。今週と来週の二回に分けて、約500ケース(3000玉)のパイナップルを販売中なのです。
何度か本欄で書いているように、駒ヶ根市は10年近く前から台中市からのインバウンド観光に力を入れてきました。2018年11月には長野県も巻き込み相互交流の覚書に調印しています。下記は当時の現地新聞の記事。
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(台北 11月6日 中央社)台中市の林佳龍市長は4日、同市内で長野県の阿部守一知事、同県駒ヶ根市の杉本幸治市長と観光・教育交流に関する3者間の覚書に調印した。林市長は、台中市と駒ヶ根市は6年余りにわたる交流を通して友好の基盤を固めてきたと述べ、台中国際空港と松本空港を結ぶチャーター便の運航や農業、教育、文化、観光などの分野における協力に期待を示した。
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私もこのとき訪問団の一員として、ちょうど国際花博が開催された台中を訪れ歓迎を受けました。人口280万の台中市に比べ僅か3万人の駒ヶ根はアリのような規模ですが、当時の杉本市長が何度も熱心にアプローチを続け、パートナーとして認められる存在になったのです。
その後、両市とも市長が交代し、昨年はコロナが始まって交流は実質的にストップしています。それでもせっかく築いた友好関係を大切にしようと、台湾パイナップル苦境の折り少しでも役に立ちたくて商工会議所が音頭を取り頒布会を企画したのです。(台中市は産地ではありませんが、台湾の駐日経済文化代表処とも連携を取って行ったもの)
パイナップルの調達は輸入商社を通じ当社が扱わせてもらいました。第1回頒布会は26日に行われ、200ケースを超える商品を商工会館の駐車場に運び、当社社員と今回仕入先の所長さんもお手伝いしながら、ドライブスルー方式で全数を販売しました。ケース販売のみでご家庭で5~6玉は多いかと思いましたが、お知り合いに分けたりされたようです。
当日は各メディアが取材に訪れ、中でもSBC信越放送では「ずくだせテレビ」とういう番組中で4分半ほど生中継されました。
私がインタビューに応じながら対応し、事前の打ち合わせでは上記の「なぜ駒ヶ根で台湾パイナップルなのか」をお話しするはずだったのです。ディレクターさんは「ここ、大事なところだからね」と仲間内で念を押してました。直前のリハでは簡潔にうまく説明できていたと思うのですが、本番ではリポーターさんが他のことを一生懸命話していて肝心なことに触れられず、これは残念。
獺祭の意見広告しごと
20210525
昨日の日経に意見広告が出ました。今や日本を代表するお酒として不動の存在となった「獺祭」の蔵元、山口の旭酒造、桜井一宏社長によるものです。
私たちは、日本の飲食店の「いのち」と共にあります
とタイトルがついています。
昨日はバタバタと忙しくて新聞を全部読む時間がなく、夕方になってようやく日経を開きこの全面広告に気が付きました。あちこちで話題になっているようです。
私の、いや私たち飲食にかかわる仕事に携わる人たちの叫びを、すべて代弁してくれています。感謝の一言です。
ぜひお読みいただきたいです。画像がやや小さく読みにくいかと思いますので、全文の載った同社のページにリンクを貼っておきますね。
関連リンク: 旭酒造ホームページより
ニシキヘビ無事捕獲日々雑記
20210523
灯台下暗し!
何日もかけて大勢が探し回ったアミメニシキヘビが、実は逃げ出したはずの家の屋根裏にひそんでいたとは。周囲の人たち、ほっとしたと同時に、さぞ呆れたことでしょう。。
写真のどや顔の男性は、飼い主ではなく、静岡の動物園の園長さんだそうです。
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(週刊女性)横浜市戸塚区で飼育中のアパートから逃げたアミメニシキヘビが22日夕に屋根裏で見つかった騒動の結末は、専門家の眼力のすごさをまざまざと見せつけた。
潜伏先予測が的中し発見・捕獲したのは、静岡県にある国内最大の爬虫類・両生類の体感型動物園「iZoo(イズー)」の白輪剛史園長。一般社団法人日本爬虫類両生類協会の理事長も務める。飼い主と面識がなかったにもかかわらず、助言を請われて引き受け、周辺住民がおびえる逃走劇を終わらせた。
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詳しくはリンク先の記事をお読みいただきたいですが、白輪園長はヘビの逃亡発覚時から報道陣などに「建物内が怪しい」と語っていたそうで、専門家の面目躍如です。何で家の中をもっとしっかり探さなかったのか、家主さんが反対したとか言われていますが、ずっと捜索に駆り出された警察がお気の毒。もっと早くにプロのアドバイスを聞いていれば良かったですね。蛇の道はヘビですから。
ニシキヘビは本来おとなしい性格だそうで毒もありません。海外旅行で観光客に、ニシキヘビを肩に掛けたりした写真を撮らせることもありますね。しかしうっかり踏んづけたりすれば、その強力な締め付けで子供などは絞め殺されかねないですから、やはり危険な存在でした。
ヘビに罪はありませんが、飼い主が平謝りするのは、まあ当然です。飼い主はこのヘビ以外にも他のヘビやらワニやら、いっぱい飼っていたそうですが、住宅街でこんなものをペットにされては、かないませんね。こういうものを扱う動物商もいるわけですな。どうやって送ってくるのやら。
警戒レベル5しごと
20210522
コロナが上伊那地域にも跋扈し始めました。。
この一週間に伊那市周辺の感染者が増加し始め、駒ヶ根市でも相次いで感染者が出るようになりました。長野県は20日、上伊那郡のうち伊那、駒ヶ根、箕輪、南箕輪、宮田の5市町村を「感染警戒レベル5」に引き上げました。6段階のうち悪い方から2番目で、全県で当地だけがこのレベルになってしまいました。
画像は21日の新聞で、当地だけが紫色になっています。この図ではオレンジ色になっている地域も一日遅れてレベルが4に上がり、現在は当地が紫、ほかの全域が赤になりました。
上伊那は県内の各地域で感染が広まっていても、取り残されたように感染者のごく少ないエリアでしたが、今月になってから急にこのような状況になりました。コロナ上陸以来、過去にない事態です。時間の問題でそのうちには来ると思っていましたが、あーあという感じです。
なんと私の知人にも複数の感染者が出ているのです。コロナがいきなり身近に迫ってきました。まだ検査結果の出ていない人もいるらしいですし、一度感染者が出れば周囲の接触者を広く検査しますから、しばらくは芋づる式に増えるかもしれません。
感染者を探して誹謗したりするような空気が(今のところ私には)感じられないのは幸いです。これだけは絶対駄目です。地域住民の民度が問われますよ。症状の出た人には一日も早く治癒してもらいたい。
市町村などの管理下にある飲食施設はことごとく休業、市井の酒を提供する飲食業には23日から6月5日まで営業時間短縮の要請が県から出されました。またしても当社には大逆風です。これらの分野では、しばらく商売にならないでしょう。
飲食店には休業・時短の協力金が一日何万円か出るようですが、関連業者はどうなるのでしょうか。まさかほったらかしにされることはないでしょうね!?少なくとも、協力でなく市町村の判断で休業になる施設へ納入している業者には、きちんと補償をする義務があるのでは。
いずれにしても、感染の連鎖が収まることを待つしかありません。2週間のうちに、風が通り過ぎることを願っています。
梅もぎ日々雑記
20210517
妻の実家に梅の木があり、季節になると実を収穫するのが私の仕事になっています。先週末、例年のごとく出動してきました。
実際は梅の木一本分の実を採るなんて、全然大した作業ではありません。梅の実はむしれば簡単にもぎ取れますし、普段だと腰に「びく」を着けますが、なーに、地面に落としてあとで拾い集めればいいのです(下が固いコンクリートだと実が割れてしまいますが)。いやらしい毛虫とかもいませんし。
実家には結構高い脚立があります。高齢者の(私ゃまだ先の話ですが)脚立作業で転落する事故は身近にも結構ありますので、そこだけしっかり気を付ければ。手の届きにくい場所にも実が成っていますが、私のような運動神経の鈍い者が欲をかくとえらいことになります。無理せず潔くあきらめます。
ちょっと前に買った柄の長い木バサミ、持ってくればよかったと思いました。高い場所、遠い場所のはこれで枝ごと落としてしまえばラクですね。木の背丈があまり高くなってしまっても困りますし。来年は忘れないようにしよう。(ここに書いておけば大丈夫)
2.3㎏のささやかな収穫でした。漬けるのは母に任せます。最近まで私の家にも古い梅の木があり、収穫はやっぱり私の仕事だったのですが、数年前カイガラムシにやられ木が駄目になってしまいました。残念ながら切り倒すことになり、ちょっと悲しかったな。
白状しますと私、じつは小さいころから梅は基本的に苦手で、甘く漬けたのも酸っぱいのも進んで食べることがありません。せっかく収穫しても恩恵を自ら感じることがなく、でもまあ、家族や誰かが食べてくれるからいいですけどね。大地の恵みと言うには大袈裟です、大地のおこぼれとでも言ったところかな。
文化は不要不急でない日々雑記
20210513
緊急事態宣言を受けてさまざまな施設がクローズを求められているのは、皆様ご存知の通りです。その中、国と東京都の間で都内にある美術館や博物館の開館をめぐってせめぎ合いが起きました。
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(毎日新聞)新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が12日から延長されることを受け、文化庁は11日、国立文化施設の休業継続を決めた。当初は営業を再開する予定だったが、東京都からの申請に応じた形だ。
小池百合子知事は10日夜、床面積が1000平方メートルを超える博物館や美術館に休業要請を継続することに基づき、国の施設も従うよう文化庁に文書で求めていた。
これに対し、萩生田光一文部科学相は11日朝の閣議後記者会見で、「芸術は心を癒やしたり、勇気づけたりする効果もある。人数を絞っても開けていこうという姿勢を都に伝えてみようと思っている」と営業再開を模索する姿勢を示したが、11日に都などと協議し、休業継続を決めた。
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このような静かな場所での感染リスクはとても低いことは、たやすく想像できますしエビデンスができています。それを踏まえて再開しようとした国に都がいちゃもんを付け、結局強引にねじ伏せた(国側がヘタレた)形です。
美術展を見た後でカフェに寄るのが人流を生むのでいけないというのなら、大相撲やプロ野球で5000人規模の観戦はなぜ許されるの? 理解できません。誰か教えてください。
私の身近なところで先日、ずっと前から計画してきたコンサート開催の是非について主催者会議があり、延期が決まりました。実行委員の一人として企画に参加してきた私としては、残念至極です。今この時期でなくては参加できない人が大勢出てしまうため、単純に一年後にやればいいじゃん、というわけにはいかないのです。
緊急事態宣言下ではともかく、対象外の地域では安全に注意を払って多くのコンサートが行われています。クラシックコンサートや演劇などは大声で声援など行いませんから、飛沫感染リスクは小さいことが様々な研究で立証されています。しかし残念ながらこの情報は多くの人々に共有されておらず、理解いただけないケースも少なくありません。(上記の会議に出席された方々が無理解だと言っているわけではなく、苦しい決定だったことはわかっております、念のため)
生きていくにあたって、衣食住に直接関連しない文化芸術活動は不要不急だと思う方は、もちろんいらっしゃるでしょう。でも人の営みとは、泣いたり笑ったりあったかい気持ちになったり、様々なものに触れて心を動かせることじゃないかと思います。コロナ禍においても、苦しむ人たちを支え勇気づけてくれています。さらにこうした活動を生業としている人たちがいることも、忘れないでほしいです。
つい最近文化庁長官に就任したばかりの作曲家都倉俊一氏が、「文化芸術に関わる全ての皆様へ」とメッセージを発しています。当事者・関係者に向けた文書ですが、関係ないと思われる方にもぜひ読んでみていただきたいと思います。
関連リンク: 都倉俊一文化庁長官のメッセージ
ぼったくり男爵日々雑記
20210511
IOC会長トーマス・バッハ氏のことですよ。散々な言われようです。米紙で、コロナでこんな状況の東京はもうオリンピックを返上したらどうか、との記事が書かれているそうです。代表的なワシントンポストの記事で、バッハ会長を「ぼったくり男爵」と呼んでおります。
「ぼったくり男爵」とは原語で何といっているかと思いましたが、Baron Von Ripper-off だそうです。Ripperは切り裂きジャックJack the Ripperに使われている単語です。私の辞書では切り裂くという意味は載っていますが、ぼったくるという意味までは出ていません。Ripper-offでぼったくるというスラングがあるのですね。
何がぼったくりか。言うまでもなく、IOCと開催地との不平等条約のことを指しています。収益の多くはIOCが持っていき、費用はまるまる開催地に押し付けられる。実施か中止かを決める権限は一方的にIOCにあり、開催地はその指示に従うしかない。さもなくば莫大な違約金を払うことになる。
それを承知で手を挙げたのだから仕方がないだろうとも言えますが、コロナという全世界を覆う大災害の発生なぞ想定されているはずもありませんから、出来ないものは出来ないと言うしかないでしょう、本当に出来ないのなら。
ワシントンポストの記事は、「(日本が開催を拒否したら)そのときIOCは何をするのだろうか。訴訟を起こすのだろうか。しかし、そのときはどの裁判所に訴えるのか。そもそもこれはどの裁判所の管轄なのか。パンデミックのストレスと苦しみにあえぐ国で五輪を断行しようとしているのだ。そんな訴訟を起こしたとき、IOCの評判はどうなるのだろうか。」と言っています。
まったくその通りだと思いますが、それはあくまで東京が「こんな状況でオリンピックなんかできん」とケツをまくったらの話であって、総理大臣も都知事も頑固に「できる」と言いはっているのだから、IOCが気を使って「そんな無理しないで、やめてもいいんだよ」なんて先に言ってくれるわけないですよ。
それはそれとして、本当に、五輪はできるのか。
関連リンク: ワシントン・ポスト記事 (クーリエ・ジャポン)
草枕とオフィーリア読んだり見たり
20210508
連載中の日経新聞の小説は、伊集院静の「ミチクサ先生」という夏目漱石を描いた作品です。肩の凝らぬ楽しい話ですが、漱石のロンドン留学中の記述に、ちょっと気になるエピソードがありました。
美術館を訪れた漱石が心を奪われた絵画。それがジョン・エヴァレット・ミレイの「オフィーリア」だというのです。「絵画というものは、これほどまでに文学作品の物語の根幹、叙情を一枚の絵で表現できるものなのか……。」と漱石は感銘し、「なんとも、風流な土座衛門だ」とつぶやきます。この絵は漱石にとって、後年の小説「草枕」の中で主人公が何度も思い浮かべるモチーフとなるほど、印象深かったのです。
草枕の冒頭「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」はどなたもご存知でしょうが、その先まで読んだ人はぐっと少なくなるでしょう。私も初めて読みましたよ。主人公の画家が絵画や詩をもとに「芸術とは何か」を一人考察する部分が長く、また何度も出てきて正直かなり読みにくい小説でした。
主人公は絵を描くため辺鄙な温泉地に逗留します。旅館には出戻りの、美しいけれど変わった女性、那美がいます。画家は那美に心惹かれますが、彼女に「自分の絵を描いて」と頼まれるも躊躇します。那美には芸術作品のモデルとして何かが足りないと感じるのです。しかし小説の最後に那美と出征する元夫との邂逅を偶々目撃したことで、何が足りなかったかを理解します。
ミレイの「オフィーリア」は何を隠そう、古今の名画の中でも私の最も好きな絵です。何年か前に東京で展覧会が開かれたときにはわざわざ観に行きました。これほどお気に入りなのに、草枕のエピソードを知らずにいたとはお恥ずかしいこと。
仰向けになって川に流されてゆく美少女。死に至りつつある自らの状況も理解できず、無邪気に歌を口ずさむ絶妙の表情です。水を含んで沈みゆくドレス、自ら摘んで手にしている花束とともに、川のほとりに咲く数々の小さく可憐な草花も、オフィーリアの儚い命を惜しんでいるかのよう。何と美しい作品世界であることか!これを風流な土座衛門とは、草枕主人公の台詞ですが、あまり風流でないですね。
裳裾は大きく広がって
しばらくは人魚のように川面に浮かびながら
古い歌をきれぎれに口ずさんでいました。
まるでわが身に迫る死を知らぬげに、あるいは
水のなかに生まれ、水のなかで育つもののように
だがそれもわずかなあいだ、身につけた服は
水をふくんで重くなり、あわれにもその
美しい歌声をもぎとって、川底の泥のなかへ
引きずりこんでいきました
(シェイクスピア「ハムレット」小田島雄志訳)
伊那ロータリーで卓話日々雑記
20210507
あっという間に過ぎていったゴールデンウィーク。いつもの年なら観光も飲食も大きな書き入れ時です。首都圏や大阪などが緊急事態宣言の真っ最中、雨にもたたられましたが、当地でも他県からの入り込みがそれなりにあったようです。死んだような街となった昨年のGWのことを思えば、天地の違い。
さて先月、伊那ロータリークラブ(RC)の例会を訪問して「卓話」をさせていただく機会に恵まれました。
卓話=テーブルスピーチ。RCではほぼ毎週、集まって昼食をとりながら例会を行い、その中で会員やゲストの卓話を聞く機会を持ちます。講演というほどのボリュームではなく、ちょっと長め(20~30分)のスピーチ、といった感じですかね。
この4月はRCで「母子と健康月間」にあたり、駒ヶ根で行っているネパールへの支援について話を聞きたいとして、私にお声がかかったというわけです。光栄なことですし、また他のクラブの例会をほとんど知らないので、喜んでお引き受けしました。行ってみると日頃から存じ上げている方がとても多く、アウェイ感がだいぶ減少しました。
駒ヶ根ではトカルパ村とポカラ市、二つの拠点でネパールでの国際協力活動をしています。山間地のトカルパでのことは私も支援NPOのメンバーとして現地も見ていますが、ネパール第二の都市ポカラでの活動については知らないことも多く、支援の中心になっているネパール交流市民の会、北原照美さんに事前にみっちりレクチャーを受けて準備していきました。
ポカラは山岳観光の拠点として駒ヶ根と環境が似ていることなどから、2001年に交流が始まりました。市長や病院長らが何度か現地を訪れる中で、母子保健の改善が急務ではないかということになりました。
初期には救急車や医療器材を寄付するなど物的支援を行いましたが、より現場に密着した支援をしようと「JICA草の根協力事業」制度を使い、駒ヶ根から専門家を派遣し現場の声を聞きながら健康指導をしたり、現地の保健スタッフを駒ヶ根に招いて専門的な研修をしてもらったりしています。
また赤ちゃんに毛糸の手編み帽子や吊るし飾りを継続的にプレゼントする活動には、中高生や高齢者グループが積極的に参加しており、駒ヶ根の人たちにも様々な気づきが生まれ、一方通行でない民間国際交流の果実を得ています。
伊那RC会員の皆さんにこのような話を駆け足でさせていただきました。話者が拙い故、どれだけお伝えできたか心もとないですが、私自身あらためてネパールと駒ヶ根の交流を整理するきっかけにもなり、ありがたいことでした。