聲の形読んだり見たり
20161013
「君の名は。」の大ヒットに代表されるように、今年はアニメ映画の当たり年だそうです。この秋、もう一つ注目の映画が上映されていて、静かに話題を呼び、観客もかなり入っているらしい。
「聲の形」。映画は観ていませんが、大今良時・原作のコミックは以前子供が読んでいたのを何気なく手に取って、その途方もなく重い物語と描写に衝撃を受けました。ここで書くのは、原作コミックに限定した話です。(全7巻中1巻分のネタバレあります)
主人公、石田将也が6年生の時、クラスに聾唖の少女、西宮硝子が転校してくる。退屈な日々を送っていた将也は、ちょっとしたきっかけから軽い気持ちで、クラスの先頭に立って硝子をいじめ始める。硝子の高額な補聴器が繰り返し壊されたことでいじめの実態は発覚し、将也は主犯と認定され周囲から激しく非難される。いじめの矛先は将也に向かい、硝子は転校していく。進学しても誰一人友人ができず、生きていくことに絶望し始めた高校生の将也は、硝子と偶然再会する…
いじめ描写、救いがなく、胸が詰まります。よく少年誌で連載されたものだと思います。しかしこの話は「障害者といじめ」がテーマというよりも、思うようにコミュニケーションをとれず苦しむ少年少女たちが、壁にぶち当たりながらも他者との自然な関係をつくっていこうと、もがく姿を描いたものといった方がいいでしょう。
話の中で硝子の聾唖はコミュニケーションの大きな妨げになっていますが、それだけでなく殆どすべての登場人物が、他者との関係において(意識せずとも)問題を抱えているのです。互いに深く傷つけ合いながら、それでも相手に理解されたいと願う登場人物たちに胸を打たれます。
かつての非行を深く悔いながら、赦しを請えない将也。自分を偽って「良い子」を演じ、他人に心を開けない硝子。この二人の心が通じ合う日は来るのでしょうか?
作者は女性漫画家です。非常に注意深く読まないとわからない描写も多く、時間をかけてじっくり読むことをおすすめします。この話の舞台となっている岐阜県大垣市には、「聖地」としてファンが大勢訪れているそうですよ。
ところで「聲」という字がわからなくて「カニの形」と間違う人が何人もいるそうですが、ホントかな?