ルノワール 豊満な幸せ読んだり見たり
20160825
つい先日まで六本木の新国立美術館で催されていた「ルノワール展」。オリンピックに夢中でupするのを忘れていました。もう展覧会も終わってしまって今さらですが、備忘として書いておきましょう。
私はこれまで彼の作品にあまり魅力を感じていなかったのですが(学生時代にパリの印象派美術館でいくつも観ているはずなのに、ほとんど印象に残っていません)新聞雑誌やTVなどで、この展覧会が盛んに取り上げられているのを読んだりして、本物を観たくなったのです。
会場には超名作「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」「ピアノを弾く少女たち」などとともに、「田舎のダンス」「都会のダンス」の二部作が並べて展示されています。「都会」のモデルはユトリロの母にして自らも画家であったシュザンヌ・ヴァラドン。「田舎」は後にルノワールの妻となるアリーヌ・シャリゴ。
みごとに対照的な画ですね。高級なドレスをまといながらも無表情、悲しげな雰囲気をも漂わせるヴァラドンに対し、アリーヌの開けっぴろげな幸せな顔!豊満な全身から、幸福のオーラが発散されているよう。アリーヌをじっと見つめるヴァラドンの憂い。(もちろん2枚の画の並べ方によるわけですが)
ヴァラドンもまたルノワールの愛人だった時期があるそうです。しかし画家の気持ちはアリーヌに移り、二人の女性の間には決着がついてしまった…ということなのでしょうか。
「ぶらんこ」「陽光の中の裸婦」などの光の描写も素晴らしかった。前者が発表された当初、死体のような色だと酷評されたそうですが、そうね、言われてみれば、肌に点々と散らされた青はゾンビの色合いともとれますかね?これらの画にも、ささやかなれど、幸せが一杯です。
ルノワールの描いた女性、アリーヌのみならず本当に豊満な人が多いです。横たわったり水浴したりする裸婦たちもみな豊満。文字通り、豊かで満たされた人を好んで描いた画家でした。画を観る私たちにも、モデルの、そして画家の幸せが伝わってくる気がします。