顔合わせ音楽ばなし
20151119
指揮者デビューのお話、昨日の地元紙「長野日報」に結構大きく取り上げていただき、たいへん気恥ずかしいです。ない勇気を振り絞って、続けて書いてしまいます。
ソリスト兼ゲストコンサートマスターをお願いした日下紗矢子さんとの初練習が、先週末行われました。日下さんの音楽の素晴らしさに惚れ惚れしながら、自分たちの下手さ加減にガッカリしながら…
短い時間でしたが濃い練習ができ、あと一週間頑張らにゃと気合を入れなおしました。
協奏曲の難しさは、まず何と言ってもソリストと「合わせる」ことです。私のすぐそば、2㍍足らずのところで弾いている日下さんの音楽のすべて、テンポ、フレージング、ダイナミクスを瞬間ごとに感じ取り、それをオケのメンバーに棒で伝えます。彼女は先に行きたいのか、テンポ通り真っすぐに進めたいのか、ちょっとだけ溜めたいのか、たっぷり時間をかけたいのか。オケも柔軟にそれに対応してついていかねばなりません。繰り返しますが「瞬間ごとに」です。その要にいるのが指揮者です。
これだけでも非常に困難な役割であることは想像していただけると思います。もちろん指揮者だけでなくオケの人たちも、耳をダンボにしてソリストの音を聴き、指揮棒を見て瞬時に反応して曲を進めていきます。プロなら当たり前のことでしょうが、我が伊那フィル、なかなかそこまでいけませんね。これまで練習してきたもろもろに引きずられてしまう。まあ、そのために当日を含めて3回のリハーサルがあるのですが。
でもね…必死になってソリストについていき何とか「合わせられた」ことが本番での到達点になったのでは、せっかく素晴らしいソリストを呼んでいるのにもったいないです。合わせることは不可欠なれどあくまでも入口で、その先、ソリストと一緒になって素晴らしい音楽をどれだけ作れるかが、本当は問われるのだと思っています。
オケとしてソリストと渡り合う「攻め」の表現をするには伊那フィルは私も含め戦闘力(もとい、合奏力)が全然足りませんが、それに甘えることなくできるだけのことをやりたい。技術を超えた何かで、伝わるものを精一杯出してみたい。そうでなければ日下さんだってきっと物足りないでしょう。
どこまでできるでしょうか。本番まであと4日。