日本のパンは… (2)食べもの
20150801
理由その3。日本のパンは柔らかい。柔らかすぎる。
タレントさんが日本とフランスのバゲットをかじり比べてみる映像がありました。アゴは丈夫、自信あります!と言っていた彼が、本家のバゲットを噛み切って飲み込むのに、もう涙目になって悪戦苦闘していました。肉食人種たちの「噛み切るアゴ力」と、われわれ穀物食いの「すりつぶす力」とでは、求められるアゴの動きがそもそも違うのだそうです。
というような分析を、番組ではしておりました。とても興味深い題材だったと思います。
「甘い・柔らかい」はともかくとして、日本で独自の進化を遂げたさまざまな菓子パン調理パンを、本場のパン食いたちが美味しく面白いとはいいながら、本物は違うといわんばかりな反応を見せた件、何かに似ていますね。そう、お寿司が海外で独自のびっくりするような発展を見せているのとそっくりです。
寿司の本場(ですよね)で育った私たちは、カリフォルニアロールに代表されるマヨネーズや各種ソースを使った色とりどりの寿司を見て、「これは本物の寿司じゃあないな」と思うでしょう。でも食べてみると、それはそれで結構美味しかったりしますし、回転寿司に行けば各種のジャンクネタはすっかり定番になって日本人に受け入れられています。
私は、以前本欄で書いたこともありますが、こうしたファンキーなパンも寿司も、どっちもありだという考えです。ジャンルの幅が本家の思いもよらぬ方向へ広がっていくことは、愛好者を増やし多様な食文化の拡大にもつながります。しかし、それぞれの本来の姿はこうだよ、ということも知っておく(消費者に知ってもらう)ことも同時に大切だと思うのです。オリジナルを知り、本物へのリスペクトがあってこそ、アレンジをより深く楽しむことができるのでは、と。
その意味で以前話題になった、本式の海外の寿司屋に「本物の寿司を出す店」という認定を出そうという試みは、ぜひやってみてほしかったと思っています。同様にフランス政府から「本物のフランスパンを出す店」というお墨付きがあれば、そうかこれが本物か、と多くの人が知るきっかけになるかもしれませんね。その上で日本独自のパンも楽しめば良いでしょう。
ところで、細い棒状のフランスパンをバケットという人がいらっしゃいますが(うちの社員にもいたりして…)正しくは「バゲットbaguette」ですね。杖とか棒とかいう意味です。太鼓のばちもバゲット。baquetでは「バケツ」になってしまいます。お節介ながら。