校歌への思い音楽ばなし
20150216
伊那フィルは今年、創立30周年を迎えます。記念事業として何をやろうか、飲みながらあれこれ話をするうちに…地元の小中学校の校歌を録音して、CDにしてプレゼントしたらどうよ、というアイデアが。
地域密着を謳うオーケストラとしては、なかなか良い事業ではないかと思いますが、いざ実行するとなると、結構大変なことです。オケの楽譜はもちろんそれぞれ編曲しなくてはなりません。スタジオ(ホール)や録音業者さんも手配します。問題は、伊那市内に小中学校が全部で21校もあることです!
一度にはとても無理ですが、とりあえずアレンジの出来たものから、一年かけて順に収録していくことになりました。昨日はその第一回目で、8曲の校歌を演奏録音しました。
地元伊那市とはいえ、多くは団員が誰も知らない歌です。楽譜はありますが、テンポやアーティキュレーション(音の形やつながりで表現をつけること)が現場で実際歌われているものと合っていないと困りますので、各校の音楽の先生(一部生徒さんも)に立ち会ってもらい、実際に歌ってもらったり意見をいただいたりしながら、1校当り40分の時間割で次から次へと曲を作っていきました。
今回8曲の校歌の中にも、童謡調のもの、軍歌みたいな勇ましいもの(先生は「応援歌」だと言っていました)、ゆったりと流れる大河のようなもの、あっという間に終わる短いもの、さまざまです。作曲者には松本民之助、高木東六、中田喜直といった著名人のお名前も。
収録中、ある先生がこう言いました。「いま学校では、じつは書かれているより早いテンポで歌っているのですが、地元の人から『年々早くなっている』とお叱りを受けることがあります。今回は楽譜の指定通りの、ややゆっくり目でお願いします」
なるほどなあと思いました。小中学校の校歌は確かに、現在の学校関係者だけのものではなくて、その地域に住む人たちに共有されたものなんですね。地域みんなの、子供たちへの思いを歌に集約したものが、校歌なのです。
録音は後に残ります。学校によっては今後何十年か、歌い方の規範として用いられるかもしれません。自分たちの今やっていることの、ずっしりとした重みを感じました。
あと13曲、ますます大変です。