忘れない 氷上の名花日々雑記
20140223
ソチ五輪。浅田真央選手の二度の演技に、心を大きく揺さぶられた2日間でした。
トリノ(年齢制限で出場できなかった)の頃からずっと彼女の演技を見てきました。TVの画面の中で、彼女はいつも輝き、ある時は少女らしく、ある時は大人の表現を見せながら美しく舞い、跳んでいました。その彼女が、この大舞台でこれほどまでにボロボロのスケートをするとは、まったく信じられなかった。すべてがうまくいきませんでした。
佐藤コーチも声を掛けられないようなこわばった表情でリンクを降り、インタビューで魂の抜けたような受け応えをする彼女を見て、私も茫然となりました。もちろんメダルは絶望、日本選手の中でも最低点、出場30人中の16位に沈んでしまうとは…
その浅田真央が翌日になって、これほどの素晴らしい演技を見せてくれることを、誰が予想したでしょうか?いったいこの一日の間に、彼女に何が起きたのだろうか。
トリプルアクセルを含む6種類8回のジャンプをすべて跳ぶ、女子では誰にもできない難度の高いプログラム。それを完璧に演じきり、自己最高点をたたき出しました。滑走順がこれほど早くなかったら、もっと高い得点が出ただろうと想像します。
3Aに代表されるように、アスリートとしていつも高難度の技に挑んできた彼女でした。安全な技を完璧に演じることで好成績を挙げてきたライバルとの違いは明らかでした。浅田真央の絶えず高みを目指すストイックな姿勢にはいつも感銘を受けてきましたが、一方である種の痛々しさを感じさせるものもあったと思います。少女の頃の、怖いもの知らずで伸び伸びした演技は、戻ってきませんでした。
バンクーバー後、名伯楽佐藤コーチの門を叩き、スケーティングの基礎から叩きなおしたと聞きます。滑りの改造中は大会での成績も振るわず(といっても入賞レベルから落ちるようなことはありませんでしたが)ファンはやきもきしましたが、終始ぶれることなくソチに照準を合わせて実力を積み重ねてきました。
そして迎えたこの二日間の演技でした。フリー終了後のあの表情は、すべてを終えた安堵か、ショートで力を尽くせなかった悔恨か、思っていた演技をやりつくした達成感か。本当のところは本人にしかわかりません。私たちにできるのはただ、苦しみを越えて彼女がなしとげた素晴らしい演技を忘れずにいることでしょう。
お疲れさま、真央ちゃん。今はゆっくり休んでほしい。