うな丼の未来 (6)うな丼の未来
20130819
シンポジウムメモ、さらに続きます。。
異種ウナギは救世主になれるのか 吉永龍起氏(北里大学)
ウナギ属には19種おり、その3分の2は熱帯に生息する(ニホン、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアは温帯種)
市販の蒲焼のDNAを鑑定してみたら、主に流通しているのはニホンとヨーロッパ、あと少ないがアメリカ、バイカラ、オーストラリア種
シラスの主な輸入元はほとんどが香港(年によっては100%近く)だが、香港にシラス業者は存在しない 実態は他の国から香港をダミーにして輸出されている
温帯種では単一種のシラスを集められるが、熱帯では他種の混在を避けられない
シラスの異種混入を放置しておくと、日本の天然水系(河川)に異種ウナギが散逸する可能性がある。これは生態系の維持からいって困るし、寄生虫や病原菌の問題もある
漁業者の役割―蘇るか浜名湖ウナギ 吉村理利氏(浜名漁業協同組合)
魚種を守るためにシラスを禁漁し、現在ウナギに関わっている業者たちを葬ってしまっていいのだろうか?
浜名湖のシラス漁は満潮時、潮が止まった10分間ほどで急いで網をかける。成魚は定置網や竹筒で捕る。
浜名湖周辺に一万羽もいる「ウミウ」がウナギを捕ってしまう。大敵。
現在は主に親魚の放流をやっているが、放流してもオスなので増加はしない。科学的に正しいことをしているのかよくわからない(※本当ですね。デモンストレーション以上の意味があるのでしょうか?)
養鰻池には重油をたくさん使う、水温を約30℃に保つため
(宮城の牡蠣の例を引き合いに出した質問に対して)湖の周囲に植林をして湖の環境を再生したいと考えたこともあったが、周囲にあるのはミカンと杉の木ばかり。規制があり望むような広葉樹を植えることが許されていない。
養鰻業の役割―今までの資源保護対策とこれからの資源保護対策 白石嘉男氏(日本養鰻漁業協同組合連合会)
国内の養鰻業者 3000→444に
30年前から放流を行ってきた
現在は台湾や中国の養鰻業者と定期的に情報交換をしている
(シラスウナギ、中国語で鰻苗、英語ではglass eel)
産卵のため海に下るウナギを捕まえたら放流するよう、一般に求めている
浜名湖では、すべての成魚を捕獲して放流することに決めた
蒲焼商の役割 涌井恭行氏(全国鰻蒲焼商組合連合会)
【この日(土用丑の日)はとても店を離れられる状況でないので、声明文が代読されました】
蒲焼店は激減中、もはや瀕死の状況
ウナギ成魚の30%は蒲焼店、あとは加工業者へ流れている
加工品の輸入は80年代から激増している、最大13万トンが輸入された
ワシントン条約対象になることには危機感はあるが、蒲焼専門店の価値が見直される機会になるかもしれない。ウナギ蒲焼を安さだけでとらえてほしくない
一部の生産者のためにシラスが暴騰しているという見方もある(※品薄をいいことに値を吊り上げたり、素性の怪しい闇シラス?が流通していることを言っているのか?)
シラスは12t(水産庁の見解では20t)もあれば日本人の胃袋を賄える。シラスの価格にぜひ上限規制を設けてほしい
蒲焼店は苦しいながらも何とかのれんを守っていくつもり。専門店ならではの美味しい蒲焼、職人の技を守っていきたい
報道の役割―ウナギ問題をどう伝えるか 井田徹治氏(共同通信)
報道メディアのおかしさ
・スーパーがウナギを安く売るのは消費者のためで素晴らしい、という報道
・異種ウナギは救世主?→A種を採りつくしたら、次にはB種を採ればいいという「乱獲のヒットエンドラン」資源の危機を一時的に見えなくさせてしまい、魚種交代の原因になっている
サバ→タイセイヨウサバ タラ→ホキ ニホンウナギ→ヨーロッパウナギ
・ワシントン条約の対象になったら大変だ、どうしよう?→本来は不正な輸入品を排除するためのものなのに。
ウナギは野生生物である 商品食物と見てはいけない
元本に手を付けず、利子を食べていかねばならない
メディアの報道姿勢のおかしさは、広告主の圧力よりもむしろ、記者クラブ制度やメディア各社内のセクショナリズムが問題なのではないか(※科学記者と経済記者の見方にはかなりの違いがあり、本来はメディアとしてそれをすり合わせていくべきなのに、それぞれが勝手な紙面を作っている矛盾。聞いたことがあります。また発表主の意向に反する記事を書けば、次から情報をもらえなくなるかもしれません。記者クラブの弊害)
環境行政の役割―環境省第4次レッドリストについて 中島慶二氏(環境省)
環境省のレッドリストは、普及啓発のための基礎資料だという位置づけ(規制とは違う)
ニホンウナギは絶滅危惧種1B(EN)に該当する 3世代減少率50%以上が対象で、ニホンウナギは72~92%
レッドリストは「このままでは危ないんじゃないか?」という警告。必ずしも厳密な科学的証明を必要とするものではない。
誰かを悪者にし糾弾して終わりではなく、ウナギを守るためにできることは全部やる、という姿勢でいたい。
(続く)
※ナショナルジオグラフィックのホームページに、井田氏の「ウナギが食べられなくなる日」という連載記事があります。ボリュームがありますが、ウナギ資源問題がわかりやすく書かれていますので、ぜひ読んでみて下さい。
関連リンク: ウナギが食べられなくなる日