さらし者日々雑記
20130202
20歳のアイドルが、男性との交際をすっぱ抜かれたことで、頭を丸坊主にし涙を流してネット動画で謝罪する。正視し難い異様な姿です。
大方の反応は「どん引き」でしょう。誰にも相談せず自分で決めたことだ、と彼女は言います。それを撮影し公式サイトで世界中にさらしているのは彼女の所属する事務所です。
今は彼女のしたことでなくて、さらされた姿の異様さが独り歩きしています。芸能アイドル、人気商売であるならば、男女交際についてある程度の枠がはめられることもあるでしょう。それを逸脱した見せしめとして、このような方法がとられたこと、私は彼女のファンでも何でもありませんしだいたい名前も聞いたことがなかったが、いま感じる不快さはマックスです。
やりすぎと言われることを承知で同情引き、あるいは話題作りとしてあえてやっているのだとしたら、論外。いま話題となっているいじめ体罰と関連付けて批判している人も多いようです。もちろんそういう見方もできるでしょう。
女性が髪を切られ丸坊主になる…私は男なので、髪を切ることがどれほどつらいことかは、想像するしかありません。例えになるのかどうか、ヤクザが小指を詰めることと比較しても、肉体的な苦痛はなくても精神的な苦痛がいかほどかと考えると、心が痛みます。矛盾するようですが、これはもう彼女自身の傷心、屈辱云々を超えたところで、人の感情を逆撫でしている事態なのではとさえ思います。
第二次大戦中、ドイツに占領されていたフランス。駐留していたドイツ兵と恋におちた女性が何人もいました。中には子供を宿した人も。ドイツが敗れフランスが解放されたとき、住民は敵兵と交わった女性をつかまえて髪を切り、街中を歩かせて裏切り者とののしり、さらし者にしました。報道写真家ロバート・キャパによる一枚をご存知の方も多いと思います。現代史のおぞましい瞬間を切り取った見事な写真です。赤ん坊を固く抱きしめて歩く女性をあざけり笑う人々に注がれる、カメラマンの厳しい視線を感じます。
繰り返しますが、タレントの男女交際がどうこうというのではないのです。私にはそんなこと関係ない。女性が坊主頭になって「謝罪」する姿の重さを、このアイドルを取り巻く人たち、どれだけ考えたのでしょうね。