チャンゴ (1)音楽ばなし
20120524
伊那でオペラ「春香(しゅんこう)」の公演が近づいています。韓国に伝わる悲恋物語を題材に高木東六さんが戦後まもなく作曲したオペラです。伊那フィルがオーケストラを担当しますが、オペラ初体験の私たち、正直申して苦戦中です…すべてが歌とともにあるオペラのオケには、普段のコンサートとはまた違った「勘」が求められ、なかなか難しい。
「春香」にはさまざまな打楽器が使われていますが、大きな特徴は韓国に伝わる太鼓「チャンゴ」が大活躍することです。韓国に行かれた方は、民俗村などでご覧になったことがあるでしょうか。
今回使う楽器は私の個人所有物で、15年前に初めて韓国旅行した際、ソウルの楽器店で悪戦苦闘しながら買い求めたものです。
80年代後半、「サムルノリ」という4人組の韓国打楽器グループの演奏を直に見る機会がありました。チャンゴを始め、ケンガリ、プク、チンという銅鑼や太鼓を使った合奏で、その複雑なリズム、激しくダイナミックな響き、そしてステージ中を所狭しと跳び回る(形容ではなく、本当に跳び回っていました)パフォーマンスに驚嘆し、たちまちファンになりました。
この日の演奏は評判を呼び「サムルノリvsサントリーホール」と題してレーザーディスクに収録され、ソニーから発売されました。彼らはこの頃しばしば来日しており、何度かライブを見に行き、ミーハーにも飛び入りで一緒に踊って握手してもらったこともあるのですよ。写真はサムルノリのリーダー、金徳洙(キム ドクス)氏です。彼のチャンゴは、まさに鬼神の技であり、魂の響きを感じます。
こうしてサムルノリファンになった私が、10年後に商工会議所青年部の旅行でソウルを訪れたとき、チャンゴを入手しようと躍起になったのも無理はないことでしょう。半日の自由行動時間があったので、ホテルのコンシェルジェに楽器店のありかを聞いて一人で街に出かけました。
あるはずの場所に店はなく、1時間近く探し回ってようやく見つけた小さな太鼓店。チャンゴはたくさん並んでいますが、ミヤゲモノみたいなチャチなやつではなく、プロ用の本格的なものを買いたいし、叩き方もせめて撥の持ち方くらいは教わりたい。お店のオバサンは日本語はもちろん英語も全く駄目で、弱ってしまいました。
オバサンが思いついて日本語のできる知人に電話をかけ、その人に受話器越しに通訳をしてもらい、ようやくプロ用だという品を選んでもらうことができました。幸いそう高価なものではなく、チャンゴに加えてプクというもう1種のサムルノリ太鼓もあわせて購入し、仲間に呆れられながら巨大な包みを機内に持ち込んで帰国しました。