「おいしいことなど徒然と」

社長ブログ

SFの巨人読んだり見たり

20110729



作家の小松左京氏が亡くなりました。享年80歳。


多くの作品がありますが「日本沈没」「復活の日」「さよならジュピター」あといくつかの短編しか読んでいません。ほんの一部にしか接していないで大したことは言えませんが、私の読書体験に大きな思い出を残してくれた人です。


代表作「日本沈没」が出版されたのは1973年のこと。たちまち大評判となり、空前のベストセラーとなりました。小学6年生だった私は、夏休みに父が買って家にあったこの本を読み、その大胆な構想、精緻な考証、ぐいぐいと押してくる筆力に感嘆し、只ならぬ興奮を覚えました。背伸びをして大人の本を読んでみる楽しさ、優越感(誰によ?)みたいなものを感じていたのかも知れません。


小説ってのは、これほど面白いものか…。プレート移動理論、日本沈没を引き起こすメカニズムについての記述はいささか手に余りましたが、幾度となく引き起こされる大災害の描写に戦慄し、主人公の活躍に胸を躍らせ、政府首脳や学者たちの苦悩からは、まだろくに知らない政治や社会の構造に何だか近づいたような気もしました。


何度も何度も読み返し、大体の台詞も頭に入ってしまいました。傍点を多用した独特の文体も気に入り、中学校だったと思いますが国語の時間に「これまで読んだ本の文章で気に入った部分を書き出せ」という課題が出たときに、何ページもこの本から引用をしました。先生はきっと呆れたことでしょう。


上下巻あわせて385万部が売れたそうです。当時は高度成長期が一段落したところへオイルショックや狂乱物価などが世間を騒がせ、これもベストセラーになった「ノストラダムスの大予言」などと共に終末ブームをつくった時代背景がありました。


映画化されたのはもちろんですが、当時ラジオドラマにもなったのをご存知ですか?わくわくして聴きましたが、我が家は電波状況がとても悪く(今もです)雑音だらけで、最初の数回を聴いただけで諦めました。


巻末には「第一部 完」と書かれ、第二部では沈没後の日本人の流亡記が書かれるはずでしたが、待ちこがれた続編はいつまでたっても世に出ることはありませんでした。もうとっくに忘れた頃、06年に谷甲州氏との共著として出版された「日本沈没 第二部」は、残念ながら大きく期待を裏切るもので、この本は自分の中では「なかったこと」にしたいと思っています。


その他に印象的だったのは…
「影が重なる時」という短編がありました。日常生活の中に突然現れた、硬直した分身。彼らは何故現れたのか?ぞくっとするような結末が待っています。
「復活の日」は、先に映画を観たのですが、後から原作を読んでこっちの方がずっと面白いと思いました。やはりこうした滅亡パニックものは、上手いですね。


日本のSFを代表する作家としてだけではなく、その構想力を万博などさまざまなプロジェクトに生かして大活躍された著者でした。ご冥福をお祈りします。


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