味ラジオ実現へ日々雑記
20240914
「味ラジオ」とは、星新一の短編集「妄想銀行」に収録されているショートショートです。本がいま手元になくうろ覚えですが、どんなお話かといいますと…。
・未来の人々は、放送局から送られる味のデータを奥歯に埋め込まれた装置で受信し、世界中のバラエティ豊かな味を一日中ずっと楽しんでいる。味覚は視覚や聴覚とちがって仕事や勉強の邪魔をしない。栄養は管理された無味の栄養食から摂っている。
・実際の食事を提供するレストランもあることはあるが、期待通りの味でなかったり栄養バランスが崩れお腹を壊したりすることもあって、それほど人気はない。
・ある日、放送局の事故でデータ信号が突然発信されなくなってしまった。絶え間ない味の刺激に慣れきっていた人々は、味の空白に耐えられずパニックに陥る…
本作が発表されたのが1966年。60年近くたって、科学の発展はついに味ラジオを現実のものとしてしまいました。
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(ITMediaNEWS) 味の素(東京都中央区)は9月10日、皮膚への微弱な電気刺激で食品の味を調節する技術「電気調味料」を発表した。ネックバンド型や耳掛け型のデバイスを用い、様々な減塩食の塩味を増強できるという。
研究では「鶏がらスープ」「豚バラ大根」「餃子」など和・洋・中の減塩食で検証したところ、全て塩味が増強されたという。「食品によっては、塩味だけでなくうま味や酸味も強まり、かつ風味も変化することが示され、電気刺激は食品の味だけでなく風味にも影響を与えることを実証した」としている。
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少し前に「電気スプーン」を使った塩味増幅機能を持つ装置が開発されたという記事を読みましたが、電気調味料は食物に触れることなく味覚を操るという、味ラジオの概念により迫ったものだといえます。しかも、塩味のみならずうま味や酸味などもコントロールできる可能性さえ出てきました。
減塩食の味の補完という機能は素晴らしい。味気ない食事の日々から救われる人もたくさんいることでしょう。しかし…。
味ラジオの世界が将来実現したならば、世の中の食品製造業、食品販売業、飲食業はごく一部を除いて商売あがったりになること必至です。当社も例外ではありません。夢は夢として置いておく方がいいようです。
関連リンク: 味の素「電気調味料」発表 皮膚への電気刺激で減塩食を“しょっぱく”するネックバンド型デバイスなど開発へ(ITMediaNEWS)