善児、死す読んだり見たり
20220829
「鎌倉殿の13人」面白いですねえ。日曜夜は伊那フィルの練習と重なるので録画して翌日以降観るようにしていますが、最近は待ちきれずその日のうちに観てしまいます。私は学生時代日本史を真面目にやらなかったので、鎌倉時代については中学生程度の知識しかなく、大河ドラマは大変勉強になります。
昨日の放送第33話は、修善寺に幽閉された二代将軍頼家(金子大地)を暗殺する場面で終わりました。手を下すのを命じられたのはこのドラマオリジナルの人物、善児(梶原善)。
番組をご覧の方は先刻ご承知ですが、善児は主から密命を受けて邪魔者を殺害する死刑執行人です。相手が子供であってもためらうことなく命を奪います。台詞は極端に少なく表情もほとんど変えない不気味なキャラクターで、本作が始まってから前回までに12人を殺しているそうです。毎回登場するわけではなく要所要所で出てきますが、タイトルの登場人物に善児の名が現れると「今日は誰が殺されるのか」と視聴者が戦慄する、とまで言われていました。
先週の第32話で、その善児に変化がありました。主人公北条義時(小栗旬)から頼家の長男、一幡殺害を命じられたものの、苦しそうに拒否する善児。理由を問われ「儂を好いてくれている」と涙する。殺人マシーンが初めて見せた人間らしい姿に、ああ、これは死亡フラグだなと思った人は多かったでしょう。(一幡は結局、善児の弟子トウ(山本千尋)が殺します)
さて頼家との対決。善児はいつも一撃で相手を殺していたので、一対一の死闘を演じるのは初めてです。その俊敏な動きは驚くばかり。このドラマにはあまり出てこない本格的な殺陣を見せる二人。頼家役もお見事。善児が頼家を追い詰めたときに目に入る「一幡」の文字。頼家が一幡を供養していたのです。一瞬ひるんだところを頼家の白刃が突き刺します。やっぱり死亡フラグでした。
止めを刺そうとした頼家はトウに殺され、瀕死の善児もまたトウに「ずっとこの時を待っていた…父のかたき!…母のかたき」と殺されます。トウは以前、善児が源範頼を殺害したところに居合わせ巻き添えで殺された農民夫婦の娘で、孤児となったのち善児に後継者候補として育てられていたのです。この設定は、これまで何人もの人が「生かしておけば将来に禍根を残す」と善児に殺されてきた因果がブーメランのごとく返ってきたもの。
このドラマは最近では毎回重要人物が死んでいく重苦しい内容です。それをエンタテインメントとして見せ、視聴者の予想を裏切る意外な結末でありながらじゅうぶん納得させる、三谷幸喜の脚本が冴えわたっていると思います。