非常時の賞味期限しごと
20220716
私どもの商売では、賞味期限というものを常に頭の隅に置きながら仕事をしております。まあ、当然ですよね。そんな中で、ちょっと気になる記事。
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(読売新聞)JR東日本仙台支社は13日、大雨で運転を見合わせた列車内で配布した缶詰パンの賞味期限が約3か月切れていたと発表した。健康被害は確認されていないが、食べた乗客に連絡するよう呼びかけている。
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↑これが「気になる記事」なのではありません。この記事を読んだ食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんがyahooニュースで疑問を呈しています。リンク先をご参照ください。その中で井出さんは、
1)管理の落ち度はあれど「おいしさの目安」が過ぎただけ
2)毎年のように繰り返す「非常時の賞味期限切れ備蓄食品配布」
3)健康被害はないのにメディアは何を伝えたくて毎回報じるのか
4)府省庁は賞味期限が過ぎた缶詰も廃棄せずに活用
と述べ、『食において重要なのは、安全性の担保と同時に、限りある資源の活用である。非常事態に際し、賞味期限を杓子定規に守ることと、命を守ること、どちらが大切なのか』と締めくくっています。
私は井出さんの言うことに全面的に賛成です。おいしさの目安を示す「賞味期限」と、それを過ぎたら急速に品質が劣化する「消費期限」の違いは本欄の読者の方々はご承知のことだと思います。賞味期限をちょっとばかり過ぎたからといってその食品が食べられなくなることはありません。
残念ながらその事実は多くの消費者にまだまだ浸透していないと思います。十分承知しているはずの大新聞が「健康被害は確認されていないが」などと書くことも、正しい知識を消費者に提供するというマスコミの役割を理解していないとしか見えません。
ご家庭内の戸棚にしまってあった缶詰やら調味料やらが賞味期限を少々過ぎていても、即座に捨てるには及びませんよ。我が家はその辺かなり鷹揚で、数年(!)過ぎたものでもだいたい平気で食べています。開封して「こりゃだめだ」と捨てることも、たまにはありますがね。これほどまでは他人様にはおすすめしません。
記事の(4)に書かれていることは、私も知りませんでした。役所が賞味期限の過ぎた缶詰などを食糧支援に回しているという話、とても良いことだと思います。こうしたことをほんと、もっとPRするべきです。
ただし、私たちが商売として売り物にできないことは言うまでもありません。たくさんのアイテムを在庫する食品問屋は、日々賞味期限との戦いです。だいじな商品を廃棄することのないよう、肝に銘じて仕事に臨まねばなりません。