ボッコちゃん読んだり見たり
20220407
星新一の伝説的ショート・ショート。先日TVドラマでやっていたので、懐かしく思い出し読み返してみました。いま読んでも古くないですね。
父の本棚に「さまざまな迷路」があったのを小学生の頃に読んだのが最初かな。かつては中学生や高校生にも相当な人気でした。一話がせいぜい数ページですから誰でも簡単に読めたってこともあるでしょう。いまどきの中高生は、ほとんど知らんでしょうな。
しかし中身は、それぞれ珠玉の完成度です。星新一は創作に関して「アイデアを出すのはすさまじい苦しみ、テストの答案を毎日書いているようなもの。しかもテストはいよいよとなれば白紙で出すこともできるが、ショートショート作家は締め切りを逃げるわけにはいかない。しかも毎回完璧な答案を求められる」と因果な境遇であることを告白しています。
ボッコちゃんは「人造美人」なる短編集に収められ、これも父の本棚にありました。これほどの名作、多くの方はもうご存知だと思うので、以下ネタバレしますよ。
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あるバーのマスターが作った精巧な美人型ロボット、ボッコちゃん。簡単な受け答えと酒を飲むことしかできないが、バーカウンターに置かれたボッコちゃんは客の人気を集めていた。誰もロボットだとは気が付かなかった。ボッコちゃんに熱を上げていた若い客が、暖簾に腕押しの状況に思いつめ、彼女を毒薬で殺そうとするが…
マスターが考案した「提供した酒を再利用するシステム」が仇となり、このせこいアイデアのためとんでもない結末を迎えます。客がボッコちゃんに飲ませた酒はこっそり回収され、再び客に提供されていたのです。
これは子供心にも変だと思いました。だってボッコちゃんはいろんな種類の酒を飲むでしょう。ウィスキーもブランデーもビールも、みんな混ざっちゃうじゃないですか。そんな謎のカクテル?を客に出せませんよ。
ドラマでは、酒の種類別に複数の回収容器があるように描写されていましたが、どうやって分けるんだ?口の中にセンサーでもついていて、体内で酒の行き先を分岐していたのでしょうか。
ドラマの結末は若い客が良心の呵責に耐えかね店に戻ってきましたが、原作の方が味わいがありました。ラジオの「おやすみなさい」に応えて自分も「おやすみなさい」を言い、いつまでもツンとした顔で座っているボッコちゃんが不気味です。