ウエスト・サイド・ストーリー読んだり見たり
20220314
永遠の名作が何とスピルバーグによってリメイクされる。1年ほど前にこのニュースを目にして、もう本当にワクワクして待っていました。昨年12月に公開される予定だったのが何故か延期になり、2月の公開初日に観に行きましたよ(その回の観客、私を含め5人)。すぐに本欄で感想を書こうと思いましたが、ついつい先延ばしにしておりました。
前作は学生時代、リバイバル上映で東京渋谷の映画館で観ました。バーンスタイン作曲の音楽の素晴らしさ、ダンスの躍動感、自由自在なカメラワーク、主役二人を食ってしまったジョージ・チャキリスのカッコ良さ(この人、89歳で今なお現役だそうな!)。落書きによるエンドクレジットも味わいがありました。
ただし、全体を漂う古びた感覚はぬぐえず、観た当時でさえ「過去」を感じました。のちに作家の清水義範氏が「私の中でウエストサイド物語は、寿命が尽きたのだ」と書いたのを目にして共感しました。スピルバーグのリメイクは、きっとそれを解決してくれるに違いない…。
それは、期待通り、いや期待を大きく上回る出来となりました。前作以上のものは望めないかと思われた数々のダンスシーンは一層パワーアップしていました。最も有名なナンバーの一つ「アメリカ」は人数を大きく増やし街を縦横無尽に駆け回り、圧倒されました。歌も良かったですね。前作は俳優の多くが口パクで実は別の人が歌っていて、そのことが幾分興醒めだったことは否定できませんが、今回はホンモノ。皆さん優れた歌唱力を発揮していました。
前作で助演女優賞を獲得したリタ・モレノが老婆役で大きな存在感を出していた他には、有名俳優は登場していません。私が知らないだけか。主役男性トニー役はキャラが今イチだったかな。オーディションで3万人から抜擢されたというマリアは、美人ではないが、よくやっていたと思います。いま検索したら、何とチノ役の俳優と交際中なんですって!よりによってチノが相手とは、いいのか、それって。(役の上のお話)
時代背景は前作とそう変わっていないのだと思いますが、再開発で取り壊される直前のダウンタウンを舞台にし、現代のわれわれから見ても時代の壁を感じさせない作りはさすがです。ジェット団はずっと「イタリア系移民」の連中だと思っていたのですが、ポーランド系ということになっている。はて、いつの間に?
対立するグループの存在は言うまでもなく分断社会の現在を象徴していて、悲劇の末に不毛な対立の解決を予感させるエンドは感動的です。
残念ながら興行的には大外れのようですが、いやいや、素晴らしい映画ですよ!いちおうオスカー作品賞候補にもなっている。前作のファンはもちろん、初見の方にもオススメします。