悪女の誘惑 (2)日々雑記
20180226
3位決定戦でメダルを争ったイギリス戦。最終エンドの両スキップの一投ずつをスポーツジャーナリスト生島淳氏が書いています。題して「悪女の誘惑」。何というタイトル!
藤沢の最後の一投は狙った場所に少し届かない失投でした。1点リードで逃げ切ろうとしていたのに、相手に形勢逆転の絶好のチャンスを与えてしまいました。イギリスのスキップ、ミュアヘッドは1点取って延長戦に持ち込むのではなく、ここで一気に勝負を決めたいと思ったでしょう。
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あなたがラストストーンを決めて2点取れば、銅メダルですよ。そのストーンは、そう囁いているように見えた。イギリス側から見れば、藤沢のストーンは色気ムンムンで、艶っぽいことこの上なかった。悪女と呼んでもよかった。それほど、藤沢のストーンはデリバリーの位置から、見え過ぎていた。(中略)藤沢のミスが誘惑を生み、欲望を喚起させたからこそミュアヘッドのデリバリーを狂わせたのだ。(生島氏)
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結果は皆さんご存知の通りです。写真1で、12時の位置で赤白境界にある黄色い石が藤沢のラストショット。センターにもっとも近い「№1」はその斜め下の赤(イギリス)です。最終エンドで日本1点リードの場面ですから、イギリスはこの状態を崩さず明後日の方向に投げれば1点獲得し同点、延長戦となります。ただしその場合、有利な後攻は日本です。
藤沢の12時の石はミュアヘッドが直接狙える場所です。その石に薄く当てて位置を左にずらし(そのまま№1赤に当たっても、左下の黄色が№1を守ってくれるから玉突き状態にはならない)投げた石をセンター付近に止めて№2にし、一挙に2点取ろうと考えたのです。彼女の力から言えば、そう難しいショットではない(らしい)。
結果は12時の石に厚く当たりすぎたため、ガードされていたはずの№1赤が左上へ飛んでしまい、投げた自分の石はそのままサークル外へ。そして12時の黄色が№1赤に当たって跳ね返り、ゆっくりセンターへ流れて止まりました。この日本の石が№1となり、黙っていても1点は取れたはずのイギリスから逆に1点を取り返す(スチール)まさかの結末となりました。日本チームも茫然。TV観戦していた私も目が点に!
練習に練習を重ねてきた一流選手にして、こういうこともあるんだなあ。記事によればミュアヘッドが投げた瞬間、ウェイトが速すぎたことを悟り、サークル近くにいた仲間が絶望的に「off! off!」と叫んだそうですが、私はそこまでは憶えていません。
韓国との対戦でも似たような場面で相手スキップ「メガネ先輩」が信じられないようなミスをしています。こうした偶然の悪戯も含めてのカーリング。藤沢五月が悪女なのではない。カーリングに棲む魔物が悪女なのです。でも、最後の最後まで相手にイージーには投げさせない、粘りのカーリングあってのこと。だからやっぱり、藤沢はカーリングの悪女…だったのかも。
日本のカーリング娘たちは皆が北見生まれ。それぞれ違った道を通り挫折も味わいながら縁あって再び集まり、最後まで明るく爽やかに、平昌オリンピックに爽やかな風を吹かせていきました。銅メダル獲得、心からおめでとう!
関連リンク: 勝負を決めた藤沢五月の「悪女の誘惑」