流れる星に (3)読んだり見たり
20171222
一緒に地上へ落ちてゆくジョーとジェット。大気圏に突入し、二人は炎に包まれ、ひとすじの流れ星となって…。
場面は変わります。物干し台の上で空を見ていた姉と弟がいました。ここまでの物語には全く登場しない二人です。
姉が流れ星を指差して「あっ ほら… あれ!」
「ながれ星!」
姉「…きれい!」 弟「うん」
姉「カズちゃん なにをいのったの?」
弟「えへへ おもちゃのライフル銃がほしいってさ」
姉「まあ あきれた」
弟「じゃ おねえちゃんは…?」
姉「あたし? あたしはね 世界に戦争がなくなりますように… 世界中の人がなかよく平和にくらせますようにって… いのったわ」
この巻はここで(写真の次ページ)終わっています。コミック史上、最も美しく感動的なエンディングだと思います、いや、断言します。真っ白な灰になったあしたのジョーも素晴らしいが、それ以上です。弟がライフル銃を欲しがり、お姉ちゃんが平和を祈るコントラストも、絶妙に効いています。
サイボーグ009はこうしていったん完結しました。再開を望む声が高く何年かのちに復活しましたが、このエピソードを超える物語は、作られることはありませんでした。(「天使編」は凄いものになるかと思いましたが、長らく未完のまま放置され、作者が世を去ってしまいました。愛読者たちの嘆いたこと!)
ずっと前に、TVチャンピオン「コミック王選手権」なる番組が放送されました。自他ともに認めるコミックの読み手がしのぎを削る大会です。最初の課題は「自分が選んだコミックの好きな場面を読んで、一番最初に涙を流した人が勝ち」という、いかに感情移入できるかを争うものでした。
出場者の一人が、この流れ星の場面を選びました。私ったら一緒に見ていた妻に、これはどういう場面で、これこれこういう経緯で、と説明しながら1分もたたないうちにぽろぽろと涙が出てきて、番組のどの出場者よりも早くトップ通過してしまいました。私にとってそれほど思い入れのある場面です。同感だという人も、きっといらっしゃることでしょう。
流れる星に、数々の思いをのせて。