パンとお菓子日々雑記
20170330
パンが無ければお菓子を食べればいいのに…と名台詞を残した、フランス最後の王妃マリー・アントワネット。日々の食べ物を満足に購うこともできない庶民の困窮に全く無知で、浪費の限りを尽くしていた彼女を象徴する言葉といわれます。
実はこの言葉、アントワネットの発言だとする記録はなく、初出とされる思想家ルソーの著作では「ある大変身分の高い女性がこう言った」と書かれているそうです。ちなみにここでいう「お菓子」は原文ではブリオッシュ。当時一般に食べられていた石のように固いパンとは全然違い、バターや卵をふんだんに使ったブリオッシュは、庶民の口には一生入らない贅沢品であったに違いありません。
ところで…
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(日経新聞、一部略)24日に文部科学省が公表した小学校の道徳教科書の検定では、教科書会社が細部にわたって記述を修正するケースがみられた。学習指導要領で示した内容に照らし、申請時の記述が不適切とされたためだ。
小1の教科書では散歩中に友達の家のパン屋を見つけた話を取り上げた。全体として「我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着を持つ」点が足りず不適切とされ、パン屋を「和菓子屋」に修正した。
教科書会社の担当者は「低学年に『我が国』は難しく、身近なパン屋で『郷土に愛着を持つ』は問題ないと考えたが、『国』も満たす必要があると指摘されたので、和菓子屋に修正した」と説明している。
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文科省は個別の事例をどうせよと言ったわけではなく、パン屋を和菓子屋に修正したのは出版社の人が忖度して(今年の流行語大賞間違いなし)自分でやったことだそうですが。パンで駄目ならお菓子にしよう、って、わけわかんない。一冊の教科書を構成するすべての要素が純和風になることを期待しているのでしょうかね。いずれにしても漫画みたいな、とびきりアホな話です。
銀座の木村屋が開店したのは明治2年(1869)のこと。日本のパン製造業は150年の長い歴史を持っており、世界に類のないオリジナル商品「あんパン」はその5年後に発売されています。一方で和菓子屋さんで売っているお菓子で海外伝来のもの、たくさんありますぞ。カステラや金平糖などの南蛮菓子はれっきとした和菓子の一分野です。
伝統の粋を凝らし、また庶民の味として親しまれてきた和菓子も、その高い技術と個性で今や世界に冠たる存在となっている日本のパンも、それぞれ我が国の立派な文化となっていると思います。それを生業としている人たちの誇りも含めて。