パーカー日本酒を採点す 飲みもの、お酒
20160908
泣く子も黙るワイン評論家、ロバート・パーカー。彼は著書の中で世界の高級ワインを100点満点で格付けし、その評価はワインの売れ行きに直結すると言われているカリスマです。そのパーカーが何と、日本酒の批評・格付けに乗り出したという話。
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【英フィナンシャル・タイムス】ロバート・パーカー氏のワイン情報誌「ワイン・アドヴォケート」が日本の純米吟醸酒・大吟醸酒の初の評価ガイドを発表した。すると1日もたたないうちに、最も評価の高い78銘柄が一躍、引っ張りだこの資産になった。
東京の高級ホテル、すしバー、ワイン収集家から、マカオのカジノ、ニューヨークのレストラン、シンガポールの大富豪に至るまで、「亀の翁・三年熟成」や「常きげん・キス・オブ・ファイア」を買おうとする業者やバイヤーが、すでに残り少ない在庫からボトルを確保しようと先を争っている。
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何だか翻訳が変ですね。実際にはパーカー自身が日本酒のテイスティングをしたのではなく、The Gray Reportの記事によれば、酒類ジャーナリストの松崎晴雄氏が800種類の中から第1段階のセレクションをし、ワインアドヴォケート誌のレビュアーMartin Hao氏がそこから78種類を選んで評価をしたのだそうです。
優れた日本酒がいま海外の注目を集めていることは、周知の通りです。今回の話も、日本酒が世界に通じるサケになりつつあることを裏付ける、一連の流れとして見ることができるのでしょう。
リンク先の記事にもありますが、高級ワインと高級日本酒には、相当な価格の違いがあります。最高級ワインは1本10万円を超えることもざらですが、日本酒は高くても4合瓶1万円くらいで最高級品を買うことができます。
「高級ワインよりずっと安いねえ!」パーカーの評価を(便宜上、パーカーの、としておきます)有難がって、世界中のお大尽たちが日本酒を買いあされば、どうなるでしょう。パーカーが高得点をつけたワインは、もはや飲料としての価値よりも投機の対象になってしまうとまで言われます。日本酒の値段は高騰し私たちの手が届かないようなものになってしまうのでは、との予想は、まんざら杞憂でもないのかもしれません。
パーカー自身の味覚が本当に神の舌かどうかわかりませんが、たとえば97点と98点のワインの格の違いを明確な尺度をもって説明できるものなのか。それに彼にも「好み」というものがあるでしょう。パーカー高評価のワインが高値で売れているのを見て、ワイン醸造家もまた「パーカー好み」方向のテイストを目指した造りをしている例もあると聞きます。これはやはり、健全な事態とは言えませんよね。
日本酒を造るための酒米は、短期間にどんどん増産できるものではないでしょうし、吟醸酒などの特別なお酒が高値で海外に根こそぎ買われていってしまったら、残ったものはどうなるのか?なんて、すぐに心配するようなことではないと思いますが。
いろいろなことを考えさせられる話題です。