サイトウキネン/サロメ音楽ばなし
20100824
信州の夏を盛り上げる音楽祭。その中の最大イベントである、オペラの上演に出かけてきました。
リヒャルト・シュトラウス作曲「サロメ」 松本市民芸術館
指揮:オメール・メイア・ヴェルバー
サロメ:デボラ・ヴォイト
ヘロディアス:ジェーン・ヘンシェル
ヘロデ:キム・ベグリー
ヨハナーン:アラン・ヘルド
ナラボート:ショーン・パニカー
「サロメ」、ずっと前からCDやビデオで親しんでおり、大好きな演目です。これまでナマで観る機会がなく、一度どうしても観てみたかったのです。例年と違って小澤征爾氏の指揮でなかったためでしょう、チケットは苦労せず手に入りました。
物語は、情念が渦巻き、生々しく、陰惨で、まあ…凄い話なのですよ。
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2000年ほど前、キリストの頃のエルサレム。ユダヤ王ヘロデは、兄を殺し、兄の妻だったヘロディアスを王妃に迎えています。サロメはヘロディアスの連れ娘で、まだ十代の少女。
ぞっとするような不思議な月が美しく輝く宴の席で、義父ヘロデに好色な目で見つめられていたサロメは、テラスに逃れてきました。すると、地下から不気味な声が聞こえます。ヘロデによって古井戸に閉じ込められていた預言者ヨハナーンが、不貞の王妃ヘロディアスをののしる声でした。
興味を持ったサロメは、預言者をひと目見たいと若い護衛隊長ナラボートに迫ります。王からは固く禁じられていましたが、ナラボートはかねてから恋心を抱いていたサロメの妖艶さに負け、ヨハナーンを外に出してしまいます。
サロメはひと目でヨハナーンに心を奪われますが、ヨハナーンはサロメの誘いには耳も貸さず目もくれず、サロメがくちづけを求めると、呪いの言葉を吐いて井戸の底へと戻っていきます。ナラボートは絶望のあまり自害します。
ヘロデが妻ヘロディアスを伴い登場します。サロメに踊りを所望するヘロデ。サロメは始め断っていましたが、踊りを見せれば褒美に何でも望みのものを与えるとヘロデが約束し、サロメは有名な「七つのヴェールの踊り」(7つのヴェールを次々と脱いでいき、しまいには全裸になる)を踊ります。
満足したヘロデが、サロメの望みを尋ねます。「ヨハナーンの首を」とサロメ。とんでもない望みに、内心ではヨハナーンを恐れていたヘロデは驚愕し、やめさせようと説得しますが、サロメはかたくなに首を求めます。ヘロデはついに屈服し、ヨハナーンの斬首を命じます。
銀の盆に載せられたヨハナーンの首を持ち上げ、歓喜に身を震わせ、くちづけをするサロメ。それを見て恐怖にかられたヘロデは、兵士たちに命じてサロメを殺してしまいます。
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音楽がまた物語に輪をかけて凄まじいのです。調性感は限界まで崩れ、大編成のオーケストラが複雑にからみあい、身の毛のよだつような響きを聞かせます。ワンフレーズごとに表情を変えながら、約1時間40分(オペラとしては短いですが)を一気に持っていく力技には感嘆します。
上演は、大いに聴き応え見ごたえがあり、大変満足しました。感想は、次の回で。