ボレロの著作権音楽ばなし
20160503
どなたでもきっと耳にしたことがある超名曲。フランスの作曲家ラヴェルの「ボレロ」が、今月から著作権切れになると話題になっています。
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【AFP=時事】クラシック音楽でも指折りの人気曲で、ユニークな構成で知られる仏作曲家モーリス・ラベル(Maurice Ravel)のボレロ(Bolero)の著作権が、仏パリでの初演から90年近くが経過する5月1日に消滅する。
(中略)
曲の進行に合わせてオーケストラの音量が徐々に上がっていくのが特徴で、パターン化されたメロディーと、催眠術をかけるように繰り返されるリズムに困惑する反応があったものの、批評家らから直ちに絶賛され、間もなく世界各地で演奏されるようになった。
ラベルの全作品の著作権収入は総額4億ユーロ(約490億円)超で、このうちボレロによるものは1960年以降で5000万ユーロ(約61億円)前後と推計されている。著作権が消滅して「パブリックドメイン」になると著作権使用料は発生しなくなる。
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私たちが古今の名曲を演奏するとき、著作権の生きている(有効な)曲を演奏する場合には、著作権使用料を払わねばなりません。もちろん伊那フィルもです。日本においてはJASRACなる団体がこうした使用料をほぼ独占的に管理していて、どこで探すのかコンサートの情報をつかんでは「伊那フィルさん、先日○○の曲を演奏されましたよね」と請求をよこします。もちろん払っていますが、楽譜を購入したりレンタルしたりする代金に含まれてるんじゃないの、といささか釈然としない気持ち、なきにしもあらず。
作曲家(ここでは音楽の話に限定します)が才能と労苦の末に生み出した作品の価値を守り、作曲家の知的所有権を大切に保護するために、著作権という概念は生まれました。今から130年ほど前の「ベルヌ条約」というのがその礎になっているそうです。
上の記事にある通り、この曲の場合は初演から90年という長い間、著作権が生きていました。国によって著作権の保護期間はまちまちで、日本は作者の死後50年ですが、欧米では70年という国が多いようです。またスタートを作品の発表時とする場合もあるようです。
70年という年月がはたして適切かどうかには、議論があります。作曲家の遺族にとっては、いつまでも著作権使用料を受け取れるわけですから、長ければ長いほどいいでしょうね。演奏する側にとっては、前述のとおり費用をかけずに演奏できた方が負担が少ないのは当然のこと。その方が演奏される頻度も多くなり、大作曲家の遺したいわば人類共通の財産を、多くの人たちがより気軽に利用できるわけです。
死後70年といえば、作曲者の子の多くはこの世にいないでしょうし、孫だってかなりの高齢になっているわけで、そんなにも遺族を保護しなくてはならないのか、疑問に思います。著作権には「相続税」ってあるのでしょうか。
加えて「戦時加算」なる、まことに理不尽な制度を日本の利用者は強いられています。第二次大戦期間を空白だったことにして、開戦時から当該国との平和条約発効までの期間(おおむね10年ほど)が本来の期間にプラスされるのです。なぜか同盟国のドイツとイタリアは戦時加算の対象にされず、日本「だけ」が不公平な扱いを受けていること、ご存知でしたか?戦後はまだ終わっていないのですよ。
TPP交渉でも著作権について論議され、日本は戦時加算撤廃を強く訴え、いくつかの国とは撤廃方向で話が進められたようです。ただ言うまでもなくヨーロッパ諸国はTPPとは無関係ですから、そこをどう調整するかが課題なのだとか。
ほとんどボレロの曲の話になりませんでした。次回で。