TPP大筋合意しごと
20151024
各国のハードな交渉が始まって何年もたち、本当にこれは合意できるのだろうか、とも思われたTPP。先日ついに大筋での合意に達し、その細かな内容が徐々に明らかになりつつあります。
蓋を開けてみれば、輸出工業製品の関税撤廃率99.9%に対し、輸入農産品の関税撤廃率は81.0%ということです。これは日本の交渉団、トータルとしてみれば、なかなか頑張ったというものではないですか。まあ撤廃時期は品目によっていろいろですし、単に関税率だけではなく輸入特別枠をどれだけ取るかということもありますから、一概には言えませんけど。
ただしいわゆる重要5項目(コメ、小麦、砂糖、乳製品、肉)については、やはり国内生産者には厳しい事態が待っているだろうと思います。国際的な価格競争にさらされることで、いっそうの合理化あるいは戦略的な経営が、待ったなしで求められることになりました。
当社の商売にどう影響していくのか。現時点で国産品と輸入品の価格差に大きく左右されるような商売ではありませんので、今後の動向を時間をかけて見定めなくてはなりませんが、直接的な影響は少ないと言っていいでしょう。輸入食品で価格の下がるものは、お得意様の使いやすい価格になってくれば、消費が増え当社の扱い量もプラスになるかもしれませんね。
業界で大きな問題になっているバター不足は、この合意によって事態改善になるとはあまり思えません。といって国内酪農家に手厚い保護が保障されたわけでもなし、まったく何とかならないものでしょうか。
関税以外にじつは注目されていた、著作権保護の問題。ご存じない方が多いと思いますが、TPPで著作権侵害の非親告罪化が進められていました。非親告罪とは、被害者が訴えなくても第三者が告発できること。これについて今回の合意で「権利者による利益確保を困難にするような深刻な影響を与える場合」に限る、という注釈がつきました。日本の主張が容れられたのです。
この項で詳しく語る余裕がありませんしそれほどの知識もないのですが、著作権侵害を過度に厳しく取り締まることは、日本の誇る「コミケ」文化を壊滅させる、と言われていました。この心配を払拭させた交渉担当者を讃える声が相次いでいます。ご興味おありの方は、検索してみて下さい。
甘利担当大臣の頭も真っ白になりました。まだTPPの全貌はわかりませんが、これで後押しされる工業輸出分野の方々には、大きな経済圏の優位さを大いに使ってもらいましょう。そして結果的に不利な扱いになる業界にも、きちんと恩恵が行き渡るだけの利益を、しっかりと上げていただきたいです。