二羽の鳩音楽ばなし
20150715
週末に町内ご近所の皆さんと、街路樹の手入れをしました。イロハモミジの樹からピョンピョンと飛び出た新しい枝を払います。我が家の前の木にとりかかると、繁った葉の中に鎮座する鳥の巣を発見。小鳩が2羽、窮屈そうに座っています。やあ、驚かせて、ごめんよ。
鳩は二個ずつ卵を産むといいます。しかもそれは必ず雄雌のペアなのだとか?私のまったく知らないうちにひっそりと孵って、ここまで大きくなったのですね。まだ飛べませんが、カメラを向けると警戒して羽をふくらませました。
ところで「二羽の鳩」というクラシック曲があるのをご存知でしょうか。アンドレ・メサジェというフランスの作曲家が書いています。かなりマイナーな存在で、クラシックファンでも聴いたことのない方が大半でしょう。
学生時代に読み、強烈に印象に残った「五味康祐 音楽巡礼」という文庫本。時代小説作家として有名だった五味氏は、熱烈なオーディオファン・クラシックファンでもありました。この本は彼のクラシック愛好家の視点で書かれた音楽エッセイ…だと思って読み始めたのですが。
好きな曲、好きな演奏家について書かれた文章はいつしか自らの歩んできた人生に深く入り込み、交通事故で人を轢き殺してしまった慚愧の中で聴いた音楽だとか、句会で居合わせた初対面の胸の大きな女子大生に惹かれ、送りがてら夜の公園で抱きしめたときに思い浮かべた曲だとか。ドロドロした告白が次から次へと出てきて、どこまで本当なのか創作なのか、わからなくなってしまいます。(著者が事故で人を死なせてしまったのは事実です)
この中の一章がメサジェの「二羽の鳩」をモチーフに書かれています。著者は妻を裏切って別の人妻と逢瀬を重ねている自分たちを、二羽の鳩になぞらえています。罪の意識にさいなまれ別れたものの忘れることができず、一年後、彼女の自宅を訪れようとします。その家の物干しには、おむつがかけられていました。
「…彼女は夫との間に子がなかった。彼女は私の子を産んでいたのである。鳩は血みどろになってしまった」(うろ覚えで書いているので正確ではありませんが、大体こんなような文章でした)おいおい、マジですか。
こんな話の背後に流れる「二羽の鳩」とはいったいどんな曲なのか?この本では曲の内容についてあまり書かれておらず、聴いてみたいと思いながら何十年もそのままになっていました。昨年CDショップで偶然見つけ、すぐに購入し聴いてみたのです。
どれだけ精妙で悲しみに満ちた曲かと勝手に想像していましたら、実は可愛らしく洒落た軽い曲で、拍子抜け。長年の思い込みが可笑しかったですが、イメージは違ったものの、それなりに魅力のある曲で良かった。二羽の鳩を見ながらこんなことを思い出しました。