牛丼一杯の価値は食べもの
20100729
牛丼店を利用することは一年に1回くらいしかないので、それぞれのチェーンの特長とか得意不得意については、受け売りの知識しかないのですが…
昨夜のニュースは牛丼チェーン大手の価格競争の話題でもちきりでした。。
これで安値競争は何度目でしょうか。今回それぞれ期間限定ではありますが、すき家、松屋が250円を打ち出し、吉野家がそれに追随する形で270円としています。そんな値段で本当にやっていけるの?と思いますが、もうさすがにギリギリだろう、という見方が多いですね。私も感覚的にそう思います。
コストの高い米国産牛だけを使っている吉野家は、豪州産など安価な牛肉を使っているすき家・松屋に対して明らかに分が悪い勝負です。でも、すき家・松屋だって、特売期間中は売れるでしょうが、元の値段に戻ったら反動で余計に売れなくなりはしないかな。
すき家には、キムチだのチーズだのとろろだのを載せたバラエティ牛丼がいろいろあります。他のチェーンはどうなのかな?「見せ玉」として250円の品をアピールし、店内では高付加価値のこうした商品やサイドメニューへ誘導するような仕掛けは、あるのかもしれませんが…そうはいっても、牛丼は他の外食産業に比べて単品商売の性格が強いでしょう。
この競争、もう値段以外にアピールするものがなくなってきている現れだとすれば、業界全体にとって、ほんとうにプラスになるのでしょうか。
それぞれ1/3のシェアを持つ各社が、ある一社を締め出そうと安値競争を仕掛け、それに成功したとしたら?残った2社のシェアは、牛丼界の中だけで見ればそれはアップするでしょうが、牛丼全体の市場規模がそれによって大幅に縮小してしまい、それほどのメリットが出そうに思えないですね。
消費者が今日の昼食に牛丼を選ぶのは、手軽で、早く、それなりにおいしく食べられるからだったと思います。しかしいま「牛丼を食べたいから」ではなく「他のどんな食事より安いものを食べたいから」という理由で牛丼が選ばれているなら、牛丼の商売はもう付加価値を生み出す余地がほとんど残されていないのではないでしょうか。
ちゃんと作った牛丼には、やはり食べる人にとってそれなりの価値があるはずだと思うんです。値段の勝負だけが話題になって、結局牛丼一杯の価値なんて250円程度のものよ、と多くの人の意識に刷り込まれてしまったら、今後景気が上昇しモノの値段が上っても、他の食べ物と比べた相対的な値ごろ感は安いまま固定化してしまうでしょう。
それって、牛丼を一生懸命作って売っている人たちにとって(大手チェーンのご本人たちも含めて)どうなんだろうか。
勝者なき戦い、とも言われる牛丼戦争、少し悲しい気持ちで見ています。