「おいしいことなど徒然と」

社長ブログ

HOME >> ブログ-おいしいことなど徒然と >> 指揮者の暗譜 (1)

指揮者の暗譜 (1)音楽ばなし

20140721

名指揮者ロリン・マゼール氏の訃報が先週伝えられました。84歳。つい最近まで元気一杯でコンサートを指揮していたと聞きますから、急なことだったようですね。まだまだ活躍できる人だっただけに、残念です。


私がマゼールの指揮をナマで目にしたのは過去一度だけ(正確には二回)です。昭和63年秋、ミラノ・スカラ座歌劇場の来日公演「トゥーランドット」をNHKホールに観に行きました。この時の公演は、私がこれまでに経験した舞台(芝居、オペラ、コンサートすべて)の中で最大の感動感激でした。マゼールの音楽は大変アクが強く、異様にデフォルメされてある意味奇怪とも言えるようなものでしたが、彼のスタイルがこの曲にはとても良くマッチし、強烈な印象を残してくれました。


演奏の内容もさることながら、この時マゼールは譜面を開くことなく、暗譜で指揮しました。全三幕、演奏時間2時間半、スコア(指揮者用楽譜)で461ページにわたる大編成で複雑な音符と歌詞をすべて頭に入れ、何も見ずに指揮していたのです!


暗譜とは、楽譜を暗記し、前に置かずに演奏することです。ピアニストもヴァイオリニストも、リサイタルや協奏曲では基本的に暗譜をし、曲を完全に頭に入れ体で覚えて演奏します。プロなら、ごく普通のことです。(高齢な人とか、あるいは複雑な現代曲などでは譜面を見ることも多い)


指揮者の暗譜はちょっと意味が違います。自分で音を出すことのない指揮者は、極端に言えば曲の流れさえわかっていれば、一応オケの前で指揮して曲を通すことはできます(私にも、まあ、できます)。でもそんないい加減なことをすれば、楽員たちにすぐバレてしまうでしょうけれど。


オペラの場合は、そうはいきません。歌手たちがステージで演技し歌うのを把握しコントロールしていくのですが、彼らは楽譜を持っていません。出を間違ったり繰り返しを忘れたりといった「事故」の起こる危険性は、普通のコンサートよりずっと高いのです。いや、実際にもしばしば起こるといいます。


その時指揮者はすかさず、この先数十小節の楽譜を瞬時に思い浮かべ、歌手やオケに合図を出しながら(もちろん口なぞ使えませんヨ)曲をどうにかしてつなげ、音楽の進行を元に戻さなければなりません。動揺する関係者を指揮棒一本で落ちつかせ、何事もなかったようにするのですから、すごいことです。暗譜でオペラを振るのは、そうしたリスクにもきちっと対応できる自信があるということです。


本当の厳しい意味で指揮者が暗譜するということは、すべての楽器の音と流れを完全に頭に入れ、何も見ないで楽譜を五線紙上に再現して書き記せる、ということでしょう。交響曲1曲に書かれる音符のオタマジャクシの数は、少なくても数千個、大規模な曲ならおそらく数万個になると思います(私の勘)。いくらプロの指揮者だからって、いったいそんなことが可能なのでしょうか。

ページトップへ

サブインデックス

  • カテゴリ別
  • 月別アーカイブ

新着情報

スペシャルコンテンツ

食品・食材データベース 飲食関係器具・消耗品データベース


伊勢喜モバイルサイト新規開業・問屋替えサポート

営業エリア

営業エリア お問い合わせ先

Copyright© ISEKI Corporation. All Rights Reserved.