うな丼の未来 (5)うな丼の未来
20130818
シンポジウムメモ、続きです。。
ウナギの資源評価 田中栄次氏(東京海洋大学)
シラスは現在では3.3%しか生き残っていない(※成魚になっていないということ?)
養殖したシラスが80%生き残るとすれば、養殖に回す分から4%位を再放流すれば、採った分は帳消しにできる
(※田中氏はシラスの採取量実績は海に存在する量と必ずしも相関しないとし、数学的シミュレーションを用いて、シラスの数はそんなに減ってはいないという仮説を提示しました。数式がたくさん使われ、私にはこの仮説が正しいのかどうか見当もつきませんが…会場には首を傾げる人もいました)
IUCNウナギレッドリスト会議報告 海部健三氏(東京大学)
IUCN…世界のレッドリストを管理する組織 本部スイス
日本の環境省の「レッドリスト」は日本独自のもの
IUCNレッドリストに載ったからといって、それだけでは特に規制があるわけではない
7/2ロンドンで行われた会議は、まだ入り口のワークショップを開いたばかり。どう議論が進むか現時点ではまったくわからない
この会議でレッドリスト種に指定されると、ワシントン条約のリストに載る可能性がある(国際取引規制)
ワシントン条約規制にも罰則があるわけではないが、加盟国は面子を保つために規制を守ろうとする(※世界から非難を浴びるのはまっぴらということ)
現在日本の鰻に関するデータはごく少ない。これだけのデータではわからないことが多すぎる。漁獲量は密度(資源量)を必ずしも表さないから(※この視点は何人かのプレゼンターからも投げかけられました)
ウナギの情報と経済 櫻井一宏氏(立正大学)
うなぎ店の売上 一店当たり3000万を切る?30年前は3500万くらい
世帯当たりの蒲焼購入額 1990年5000円→2012年2000円に
量販店、コンビニなどでの売れ残り廃棄量のデータはないが、実際には重要なファクターではないか?(※確かにその通り、胃袋に入った分だけがウナギの消費量ではないはず)
産卵場調査から予測するニホンウナギの未来 渡邊俊氏(日本大学)
ニホンウナギの産卵場所は年によって変わるし、月によっても変わる
明言はできないが年々南下傾向にあるのでは?
産卵場所が北緯14度だと、北赤道海流を経て黒潮に乗り日本に来る
北緯12度だと、フィリピンからミンダナオ海流に乗って南下し、日本や中国に来ない
(※熱帯種のウナギの種が混在し単一で採取できないのはこのため?)
産卵場へと回遊する親ウナギの減少があるのではないか
2012年は産卵場は北緯15度と北上したが、シラス漁獲量は最低だった
いくら南下しても、限界は海嶺の存在する北緯12度までだと思われる。南下の理由は雨水と関係がある
ウナギ人工種苗生産技術への取り組み 田中秀樹氏(水産総合研究センター増養殖研究所)
ウナギは飼育条件下では、自然に成熟産卵することがない
ほとんど(90%以上)がオスになる 完全養殖には「メス化技術」が必要
受精卵が得られても不安定
仔魚のエサが長らく不明で飼育ができなかった(※深海ではマリンスノーを食べているとか聞きました) 食べそうなものをいろいろ試してみたが、微小なミズクラゲを与えてみたらクラゲがウナギを食べてしまった(爆笑)などの失敗もあった
96年にサメの卵をよく食べることを発見、その後サメ卵にオリゴペプチドを加えポタージュ状にしたものを使い、99年にレプトセファルスまでの飼育に初成功
2002 人工シラスまで育てることに成功
2009 成熟体まで育つ
2010 完全養殖に成功
[現在の技術]
成熟排卵率…90% 一尾当たり排卵数…60万個 孵化率…30%
仔魚の生存率 孵化→摂餌開始…80% 摂餌開始→シラス…5%
孵化率と、シラスへの生育の率がネック ここを何とかupさせたい!
5トンのシラス(2500万尾)を生産するためには、逆算していくと
催熟親魚数で3858尾いればよい。これは決して不可能な数字ではない!
問題は、その過程での5億尾のレプトセファルスを飼育する設備がないこと
効率化、省力化、低コスト化を進めていかなければ商業レベルで使うことはできない
サメ卵が将来にわたって安定供給される保証はない 鶏卵を使えないか研究中である
(※この方の話は私の全然知らなかったことで大変興味深く、産卵から成魚までの「完全養殖」が既に成功していることは今後に大きな期待を感じさせるものでした。しかし商業採算レベルへの道はまだまだ途方もない長さだとも思いました)
(続く)