テルマエ・ロマエ読んだり見たり
20120508
いまちょうど映画が公開中で、TVや新聞雑誌で盛んにパブリシティが行われています。阿部寛主演の映画は観ていませんが、その前から大変評判だった原作(ヤマザキ マリ)のコミックは読みました。2010年度のマンガ大賞を受賞し、現在4巻が刊行されています。
主人公ルシウスは、古代ローマの浴場設計技師。入浴中にたびたび、現代日本の風呂場へタイムスリップしてしまいます。そこは銭湯、露天風呂、家庭の浴室、システムバスのショールーム、スパーランドなどありとあらゆる風呂という風呂。そこで彼が見たものは、信じられないような快適で機能的なお風呂や周辺グッズの数々でした…
ルシウスは言葉も通じない異次元空間の日本で、フルーツ牛乳や温泉玉子の美味さ、露天風呂の心地よさ、ハンドシャワーや布アカスリ、シャンプーハットなど、見るもの触るものすべてに驚嘆します。(古代ローマでは、金属製のヘラでアカスリをしていたんだそうな)我々ローマ人は世界を制覇した偉大な民族であるはずなのに、卑俗な隷民にすぎない平たい顔族(日本人のことを彼はそう呼んでいる)たちの持っている風呂文化の、何と素晴しいことよ!
1回当たりのタイムスリップの時間はそう長くありません。元の世界に帰ったルシウスはその都度、日本で見聞したさまざまな風呂文明を古代ローマに持ち込み(模倣し)大評判を取り、皇帝ハドリアヌスお抱えの浴場技師へと出世していきます。仕事熱心なあまり妻と不仲になったり、政権抗争に巻き込まれたり。
ルシウスと現代人のとんちんかんなコミュケーションの可笑しさ。そして誇り高いローマ人のルシウスが、我々「平たい顔族」にとってはごくありふれた大衆文化を前にして敗北感に打ちひしがれる様子は、私たちの内なる優越感をくすぐります。
日本人の風呂好きは世界に冠たるものだそうですが…温泉に行ってもカラスの行水で、すぐに浴場から出てしまう私には、その魅力は正直よくわからないのです。風呂上りのフルーツ牛乳は、もう何年も飲んでいませんが、おいしいと思いますけどね。