「おいしいことなど徒然と」

社長ブログ

安全と食の自由食べもの

20111007



今月1日、生食用牛肉に関する新基準が施行されました。現場にとってはたいへん厳しい基準であり、業界団体は「厳しすぎて実施不可能」だとして厚生労働省に見直しを求めました。


ご承知の通り、今年4月におきた食中毒死亡事故を受けてのものです。5月8日の記事で危惧したとおり、冷静な議論が深まらないまま「疑わしきは規制」という方向に進んでしまったことは残念に思います。新基準はユッケの提供禁止を謳ってはいませんが、結果として店頭からユッケは消えてしまいました。


私も今回の新基準は厳しすぎると思います。ぜひ規制を緩和してほしいと望みます。


ポイントはいくつかありますが、


1)人は基本的に自分の食べたいものを食べる自由がある


河豚や生牡蠣、野生の茸をはじめ、自然界には危険をはらんだ食材があふれています。人間は長年の経験による知恵で、危険な部位を除いたり信頼できる鑑定者の判断を仰いだりして、それらのリスクを判断し自己責任で多様な食を楽しんできました。

消費者には食べたいものを食べる自由があり、飲食店には(危険の度合いが極めて低いものであれば…ここが問題とされているわけですが)消費者の求めに応じて食を提供する権利があるはずです。

行政は事故が起こって自分たちの責任になることを一番嫌がるでしょうから、そもそもユッケ(生肉)の供用自体をストップしてしまえば目的は達成できるでしょう。そこには、食を楽しむ自由への考慮はありません。


2)これまで衛生管理に真剣に取り組み、リスクを極限まで抑えてきた真面目な店の努力を無視していいのか


今回、生肉が本来持つリスクを軽視してひたすら価格を安くすることを優先し、ネットで探した肉問屋から最低クラスの肉を調達し、店舗ではろくな指導もせず素人に調理を任せた業者が、4名の死者を出してしまいました。この罪がたいへん重いことは言うまでもありません。

まともな焼肉屋さんほど激怒したことと思います。当り前の話なれど、自分の店はどれほど安全に気を配ってきたことか。材料を吟味し信頼する業者から仕入れ、調理の都度に包丁や俎板を取替え、念には念を入れて安心して食べられるユッケを提供してきたのです。

それでも「万一」のことがあれば、店の名前は公表され営業停止という厳しい処分を受けることも覚悟の上でのことです。世の中の焼肉屋さんの圧倒的多数を占めるこうした方々の努力は、まったく顧られないのですか。

もし食中毒被害を出してしまったら、業者が厳しい罰を受けるのは、当然のことでしょう。何の被害がなくとも「提供した時点で懲役刑もありうる」というのは、いくら何でも厳しすぎます。


3)何故生肉を狙い打ちにするのか


残念ながら世の中に100%の安全が保証された食材は存在しません。どんな食材でも、僅かなリスクと完全に無縁ではいられないのです。このことを誤解している消費者は、大勢いると思います。

100%安全でなければ嫌だという人は、食べる必要はないでしょう。(もちろん自分で判断できない、そして細菌への耐性の弱い子供に食べさせることはNG)

しかし…貝類、川魚やサーモン、鶏肉や鶏卵、レバーなど、生食にある程度のリスクを持つ食材は他にも数多くあります。(菌やウイルスばかりではなく寄生虫の危険性もあります)こうしたものの扱いに比べ、今回の基準はあまりにも極端で過酷です。不公平です。


自分はユッケはもともと食べないから、店頭から無くなったって困らない、という人も多いでしょう。でもユッケを追放することに成功したら、次はレバ刺しが(これはたぶん確実)、その次は生牡蠣がターゲットにされるかもしれませんよ。その次は、あなたの好物の何か、でしょう。そのときは、誰が助けてくれるのでしょうか?
だからこそ、今ターゲットにされている人のことを考えるべきです。


現職の厚生労働大臣は「本気で」煙草を追放したがっているようにお見受けします。将来アルコールまでが規制されないうちに、こんな流れにはきちんとケリをつけておくべきだと思います。


何でもお上に頼り、お墨付をいただいたものだけ食べていれば良いって、そういうものでしょうか。今回業界団体も独自の自主基準を考えているようです。何とかいい形で、安全と食の自由が共に守られることを願います。



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