「おいしいことなど徒然と」

社長ブログ

夕鶴音楽ばなし

20110912



週末、伊那でオペラを観る機会がありました。「どんぐり歌劇団」という若手歌手たちの自主公演。


ピアノ伴奏による小規模な室内オペラで、演目はメノッティ「電話」と團伊玖磨「夕鶴」の2本立て。映画だけでなく、オペラにも2本立て公演があるのですよ。

どんぐり歌劇団伊那公演
 指揮 時任康文
 ピアノ 田中健
 「電話」 ルーシー:村田ゆう子 ベン:藤巻希美彦  
 「夕鶴」 つう:土田恵子 与ひょう:藤巻希美彦 


日本人なら誰でも知っている民話「鶴の恩返し」を、劇作家木下順二が本格的な演劇「夕鶴」として書きました。オペラでなくても、演劇としてご覧になった方も多いでしょう。


私が中学2年のとき、所属していた演劇クラブ(そんな頃がありましたなあ)の公演で取り上げました。私はその公演には出演せず裏方に回っていましたが、もちろん戯曲は隅々まで熟読し、今でもだいたい覚えています。


オペラの夕鶴は、木下順二の戯曲を一言一句ほぼそのまま使っています。今回は登場人物を主人公2人だけに絞ったイレギュラーな形の上演でしたが、足りない部分を補う工夫が凝らされていて、不自然さはそれほど感じませんでした(いくらか脳内補完していたかも)。


助けられた恩から人間に姿を変えたつう。貧しくとも素朴で純真な与ひょうとの生活。与ひょうを喜ばせようと、つうが自らの羽を抜き紡いだ織物が、思わぬ値で売れたことから「おかね」への欲望がじわじわと忍び込んできます。


「今度は前の2枚分も3枚分もの値で売ってくるだ」という与ひょうの言葉を、つうは理解することができません。愛する人が、とうとう自分の知らない世界の言葉を話し始めた衝撃。オペラではこの部分だけが、歌ではなくて地の台詞になっています。


「決して織っているところを見ないでね」と約束したのに、好奇心に負けて覗いてしまう与ひょう。人間の弱さです。この瞬間、すべてが決まってしまいます。


別れの場面。オリジナルでは近所の子供たちが登場し、もうこれはどうしようもなく泣けます(こういうときの子供ってのは、天下無敵ですね)。今回、子供抜きでどれだけ見せるかと思いましたが、うまくできていたようです。


実演に接するのは二度目ですが、本当に魂を揺さぶられる話です。今の子供たちは、この話(鶴の恩返しでなくて「夕鶴」として)に触れる機会があるのでしょうか?ウチの子たちも今回連れていけなくて、残念でした。


指揮の時任氏は、実は私のかつての音楽仲間です。今回、特別にリハーサルから通して見せてもらいました。相変わらず緩急自在、呼吸をするように指揮をする様子を懐かしく頼もしく拝見しました。


それからつうの土田恵子さん。演技も歌も素晴しかった。お見事でした。


「電話」の感想は、次の回で。


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