驚嘆の超絶技巧読んだり見たり
20231124
まずはこの2枚の写真をご覧ください。。
これは二つとも木彫の作品です。アゲハ蝶の作品は彩色を一切せず、よく似た色合いの木を使って寄木細工のように組み立てたもの。本物の蝶とおおむね同サイズで、大変精緻な技術だと思います。
しかしさらに見ていただきたいのは、蝶が乗っている台座です。ここで表された水滴は、台座の木をその部分だけ残して彫り下げ、磨きぬいて曲面を出して作られたものなのです。つまりこの台座は、水滴も含めて一枚の板から彫り出されているのです。彩色せずに。
スルメイカの作品。本物としか思えない微妙な曲線と、粉を吹いているかのようなざらざらした表面。これが木彫りでできているとは考えられない、このまま焙って七味マヨネーズでもつけて食べてしまいたいでしょう。
驚くのはまだ早い。このスルメは、先端につけられたクリップ、その先の金属の鎖まで含めて、一本の角材を削って作られています。パーツを組み合わせて作ったのではありません。想像を絶する手間がかかっています。
このような精巧極まりない現代の作品を集めた展覧会「超絶技巧、未来へ!」を観覧してきました。一部写真撮影可だったのでスマホで撮ってきましたが、より鮮明な写真を見たい方はリンク先などでご覧ください。
以前NHK「日曜美術館」でこの展覧会が紹介されて、ずっと行きたいと思っていたのです。今年の4月から6月には長野県立美術館で開かれていたのですが行きそびれ、今回東京(三井記念美術館)でようやく目にすることができました。会期は今週末までということで、滑り込みです。
このほかにも金属加工や漆芸、ガラス、刺繍、切り絵などさまざまな分野の作品が並べられました。どれだけモデルに近づけるかという技を通し、素材の本質に迫ろうという意気込みが感じられ、圧倒されました。
昔のTVチャンピオンで「手先が器用選手権」というのがありましたが、この若い作家たちの器用さと根気(執念)といったら人間技とも思えませんね。これほど根を詰めて制作していたら寿命を縮めてしまうのではないか、などと余計なことを考えてしまいます。
関連リンク: 美術手帖サイト