天竜河畔、朗々と(2)音楽ばなし
20210609
ソリストアンコール。クリストーフォリ氏「ここに何か楽譜が…」とつぶやきながら楽器を構え、柔らかい調べをゆっくりと吹き始めました。
数秒間、何の曲だかわからなかったのですが、聴き覚えのある曲だと気が付きました。高校の応援歌「天竜河畔」です。
天竜河畔は何曲かある応援歌の中でも別格で、野球応援の時はもちろん、文化祭や卒業式、コンパなど様々な場面で歌い続けられています。皆が肩を組んで歌うこの歌は同窓会などでも校歌より盛り上がり、親しまれていると言って良いでしょう。
私の頃は、ほとんど絶叫に近い大声で歌われていました。男子が圧倒的に多かった時代からの伝統でしょう。少なくともこの十数年ほどは、この歌は当時とは比較にならないほど大人しくきちんと?歌われており、少々寂しさを覚えないでもありません。
さてク氏のトランペット、ほんとうにスローなテンポでしみじみ、朗々と歌い上げられ、私の持っていたこの歌のイメージを覆しました。5音音階短調のメロディーは、もともと哀愁を感じさせる要素がありますが、それに加えて気品と風格までを備えたこんな魅力があったとは!
無伴奏でメロディのみが奏でられ、原曲では歌の合間に「サッサ!」と合の手が入るところでピアノの和音が華やかに登場し、2番は現代風で美しいピアノ伴奏とともに演奏されました。私の席からはピアノが見えず、しかしその音色は只者ではないと思いましたら協奏曲の作曲者、伊藤康英氏が弾いていたのでした。アレンジも彼の手によるのでしょうね。
協奏曲よりもこちらの方が強烈な印象を残したアンコールで、本来のアンコールの趣旨と違うのかもしれませんが、会場の生徒や同窓生にとってまたとないプレゼントであったと思います。
天竜河畔に咲く桜 薫ヶ丘に散る紅葉
そは血に燃ゆる若人の 雄々しき心の徴なれ サッサ
何年かすれば高校再編で他校と統合が決まっているわが母校。校歌はどうしたって新しく作ることになるでしょうが、この歌だけはなくしてほしくない、なあ。